『歴史の終わり』の著者フランシス・フクヤマが4月に新著The Origins of Political Order(政治秩序の起源)を発刊する予定である。ニューヨーク・タイムズ紙(3月7日電子版)が簡単に紹介している。本誌はまだ同書を入手できていないため、以下はジャーナリストのニコラス・ウェイド氏による同記事に基づく。
・第1巻では古代からフランス革命までについて説き起こし、リベラル・デモクラシー(自由主義的民主主義)がどう発展してきたかを論じている。第2巻はフランス革命後から現代までだ。同書によれば、人間の社会的性質には古今東西、普遍的な面があり、政治も時代や文化を超えて同じパターンで展開するという。戦争、宗教、家族や親族を大事にする傾向性なども、そうした普遍的部分である。
・中国のような専制支配体制がヨーロッパで根付かなかったのは、教会法(cannon law)から生まれた「法の支配」の概念が支配的になったことにあるという。ヨーロッパでは17世紀の英国革命を通して「法」のみが絶対的であるというルールが生まれ、英国と米国で確立したリベラル・デモクラシーが他国も真似したいと思う制度になったという。
・リベラル・デモクラシーは多くの場合、日本なら日本の、韓国なら韓国の宗教的価値観を取り込みながらその国に定着していく。それによってリベラル・デモクラシーが安定し、以後は制度の良し悪しをめぐって争わなくて済むようになる。それは同時に、リベラル・デモクラシーが簡単に根付くわけではないことも意味するという。
『歴史の終わり』に対しては、「西側の価値観が勝利し、破壊的な戦争が二度と起こらないと論じている」と短絡的に解釈して批判する読者もいた。そのためか、今度の著書は慎重さを増したように見えるが、それでもリベラル・デモクラシーの持つ意味を改めて教え、中国に対する視座も提供してくれるらしい。期待したい。(HC)
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