アメリカン・エンタープライズ研究所、フォーリン・ポリシー・イニシアティブ、ヘリテージ財団の各米シンクタンクがこのほど共同で、「中国の軍拡とアメリカの国防費に与える影響(China's Military Build-up: Implications for U.S. Defense Spending)」と題する白書をまとめた。7日付の米誌ウィークリー・スタンダード(電子版)が結論部分を引用しているので、要旨を紹介する。
・ アメリカのこれまでの対中政策は「関与とヘッジ(engage and hedge)」を基本とし、一党独裁体制が法治主義や自由市場、市民の政治的権利を尊重する政府へと移行することを期待しながら、経済的な結びつきを保ってきた。
・ しかし問題は期待したほど中国が変わっていないことであり、むしろ10年前よりも自由化は後退している。ややこしいのは、オバマ政権の「G2」発言を、より強気の外交や軍事を行なってよいというサインだと中国が解釈してしまったことである。
・ 中国の野心を抑えるのは特に難しい。中国の戦略文書は奇襲作戦やゲリラ戦などの議論で満ちており、力対力の単純な計算では説得力に欠けるだろう。
・ 中国を抑え、バランス・オブ・パワーを維持するには、アメリカ軍が東アジアで活動を拡大することが必要である。潜水艦や水上戦闘艦、第5世代戦闘機の追加配備、空海軍基地、ミサイル防衛、コミュニケーション・システムの強化や、情報戦やサイバー戦争への備えも必要である。
・ これらは高額の出費になろうが、バランス・オブ・パワーが中国に傾斜し、地域の不安定化や紛争を呼び込めば、平和維持のために現在かかる費用よりもさらに高くつくことになりかねない。
中国の軍拡の脅威が、いよいよ地域の最重要課題となってきている。必要な軍備の拡充によりアメリカの抑止力が今後も機能するにこしたことはないが、中長期的な財政問題を考えれば、決してアメリカに余裕があるわけではないというのも事実である。日本は「自分の国は自分で守る」という基本姿勢を固め、磐石な防衛体制を築くべく、同盟国として必要な協力を惜しむべきではない。
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