細胞シートと呼ばれる薄膜を使い、血管を持った組織を体外で作ることに、東京女子医大先端生命医科学研究所の岡野光夫教授らが世界で初めて成功した。27日付産経新聞が伝えている。心臓などの大きな臓器を作る可能性につながり、脳死臓器移植に替わる再生医療の未来を大きく拓く成果といえる。

従来の再生医療では、細胞シートを重ね合わせることで、ある程度の厚みを持つ組織を作ることには成功していた。しかし、せっかく組織を作っても、そこに栄養や酸素を供給する肝心の血管がなければ、組織自体が生存できないという問題があった。岡野教授らは、血管内皮細胞を混合した細胞シートを利用することで、内部に血管を持つ厚さ0.1ミリの組織を再生させることに成功した。

細胞から臓器や組織を人工的に組み立てるこうした分野は「再生医工学」といわれる。脳死臓器移植は、本誌が再三訴えているように脳死状態では人間の魂がまだ死んでいないため、宗教的に見て重大な問題がある。もう一つ、ブタなどの大型動物の体内でヒトの臓器を作らせる研究もされているが、感染症や倫理面で課題が多い。

それらに比べると、こうした再生医工学の分野は、人体の細胞や組織それ自体が秘めている自己再生のパワーを技術的に引き出すものであり、倫理的・宗教的にも問題がない。むしろ、生命に隠されている神秘のパワーを科学的に解放するという意味では、宗教と科学を融合した未来技術ともいえる。研究の進展に期待したい。(司)

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