ニュージーランドのクライストチャーチ付近で22日に起きた地震は、27日時点で死者が147人、行方不明者は200人以上と、同国史上最大の惨事となっている。被害の原因は地震のタイプや地盤の弱さなど様々に考えられるが、倒壊した建物は一部に散在しており、耐震構造に問題があった可能性が高い。
日本と並ぶ地震国である同国は、耐震基準を厳格化してきたが、実際の改修は十分でなかった。特にクライストチャーチは古い建物が多いにも関わらず、地震頻度が少ないとして市は改修に積極的でなかった。それでも昨年9月に地震が起きて大きな被害が出たため方針を転換し、約7600棟の耐震強化を来夏に始めるとしていたが、間に合わなかった形だ。
中でも行方不明の日本人28人がいたと思われるカンタベリーテレビ(CTV)ビルは75年に建設され、昨年の地震でかなり損傷していたようだ。27日付朝日新聞によると、壁に多くのひびが入り、建築技術者は補強工事が必要との報告書を提出した。だが管理者は工事を行わず、市の耐震検査でも「問題ない」とされたという。しかし現在、専門家から構造に問題があったと指摘され始めており、同市市長は26日、崩壊の原因を調査すると表明した。
同国第2の都市で観光や留学先としても人気だった同市での悲劇の損害は大きく、同国最大銀のANZナショナル銀行は、被害総額は約7400億円で、GDP成長率は少なくとも0.5ポイント下がり、信用格付けも下がる可能性があるとしている。もともとは成長の可能性も信用力も高い同国が、いち早く復興して発展できるよう、同国政府の反省と対策が望まれる。日本政府としては同国を支援すると共に、本件を教訓に日本の都市のさらなる近代化を進めるべきだろう。何より今は、行方不明者の方々の無事を切に願うばかりだ。(由)