中国政府公認の司教をバチカンが認定 ローマ法王は中国に教会を売るのか

中国政府公認の司教をバチカンが認定 ローマ法王は中国に教会を売るのか

 

《本記事のポイント》

  • 中国との良好な関係を築きたいローマ法王は中国政府公認の司教を認めた
  • 中国では宗教は「戦略的な敵」。教会の中国化が行われている
  • ヒトラー政権下のカトリック教会は教義も変節し、ユダヤ人虐殺の悲劇を防げなかった

 

ローマ法王が中国に屈しつつある。

 

米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は3日、中国政府が選んだ7人の司教の正統性をバチカンが認めることを決めたと報じた。

 

1951年に中国がバチカンとの国交を断絶してから、バチカンと中国との間に国交はない。バチカンは中国政府による聖職者の任命を違法であるとして認めてこなかった。

 

今回認められた7人の司教は、過去バチカンによって破門された者であり、その破門が解かれたことになる。このうちの数名は、共産党政府の諮問機関のメンバーでもある。

 

 

裏目に出る可能性もあるバチカンの融和的姿勢

中国では先月9日、山西省の地元の有力信者の寄付によって建てられたカトリックの「金灯台教会」が、地元政府によって爆破されたばかりだ。それにもかかわらず、中国との関係改善を目指すバチカンの意図はどこにあるのか。

 

バチカンによれば、「中国政府公認の司教を認めなければ、さらに中国政府が独自に司祭を認定する可能性があり、ローマ法王とカトリック教徒との間の霊的な交わりが疎外されることを恐れている」という。中国との融和のために、バチカンは昨年12月に、カトリック教会に忠誠を誓った地下教会の司教2人に退任を迫っていた。

 

この融和的姿勢は、法王の中国訪問や中国との国交正常化への地ならしではないかとする見方もある。だが、中国の現状を考えれば、歩み寄りは裏目に出る可能性がある。

 

 

中国で増え続けるキリスト教徒への警戒

中国共産党政府は、すべての宗教を「国家安全保障上の脅威(national security threat)」と位置づけている。なかでも信者数の多いキリスト教は最大の脅威であると見なしている。

 

というのも、中国におけるカトリック教徒の数は、900万人から1200万人だ。さらに、プロテスタントの信者は、4000万人から8000万人以上とも言われる。両宗派の信者数を合わせれば、共産党員8900万の数を超える。

 

中国共産党政府は対策を怠らない。キリスト教徒には、登録されていない家庭教会での集いや公認されていない宗教的な集いに参加すると、罰金や拘束が待っている。今月1日から本格的に施行された「宗教取締法」により、教会の教えを学ぶプランや海外の聖地巡礼なども、事前に政府の許可が必要となった。

 

しかも、1月に「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を憲法に明記した共産党は、宗教に対しても、「社会主義的価値観」を中核に据えることを要求している。

 

目的は「宗教の中国化」である。表向きは、外国の影響を排除し、テロから護るためだとしているが、これまでも「共産主義に友好的な」ダライラマの後継者を選ぶなどの"努力"をしてきている。

 

 

ヒトラー政権下でのカトリック教会の変節

歴史を振り返れば、ナチス政権下でもカトリックは変節した。ナチスが第一党を取るまで、宗教政党のカトリック中央党は議席を伸ばし、カトリック教会は、ナチス党の民族崇拝や反ユダヤ主義的態度がカトリックの教えに反するものであると考え、カトリック教徒がナチスに入党することを断固として拒否する姿勢を貫いていた。

 

しかし、ナチス・ドイツが教皇庁に「聖職者が政党政治に口を出さないかわりに、カトリック教会の宣教活動などの宗教活動を保護する」という帝国政教条約(コンコルダート)を持ちかけると、宗教活動を守ってもらえるということで、政治活動を放棄。当時、この条約は熱狂的に歓迎された。

 

そして、カトリック中央党は、ヒトラー内閣に無制限の立法権を付与する悪名高き授権法の成立を支援。同時に党を解散した。これによって、1933年7月上旬にナチスは独裁を固めることができた。

 

さらに、第二次大戦がはじまると、反共だった教皇ピウス12世は、ナチスを黙認。反ユダヤ主義について批判を手控えるようになった。

 

その結果、カトリックは次第に教義的にも変節し、カトリックが運営する病院では、アーリア人優位の優生思想のもと、不妊手術も行われるようになっていった。つまり、「ナチス的キリスト教」に変節していったのである。

 

後に、イギリスの歴史家イアン・カーショウは、「ナチの最終解決(ユダヤ人の虐殺)は、教会の指導者層の沈黙なしに起こり得なかった」と当時の教会の態度を批判している。

 

 

ヒトラーは教会による国際的包囲網を恐れていた

時を隔てて現在、中国の習近平国家主席は、「中華民族が世界の諸民族の上にそびえたつ」という国家戦略を掲げている。漢民族の拡張政策には、ナチスのころのアーリア人の国家拡張政策とよく似て、他民族は科学的に劣った劣等民族であるとして、その抹殺をも平気で行う優生学的発想があるようだ。

 

だが、本来、すべての人は神の子であり、神の似姿として造られた。これはカトリックの普遍的な教義だ。ヒトラーは、この教義に基づいた国際的包囲網を敷かれた場合の脅威を甘く見積もることはなかった。自著『わが闘争』では、カトリック教会による国際包囲網を恐れて苦悶しているのだ。

 

香港の元司教、陳日君(Joseph Zen)枢機卿は、フランシスコ法王を批判し、「バチカンは中国のカトリック教会を売り渡しているのか。まったくその通りだ」と公開書簡で述べている。

 

今回、ウォール・ストリート・ジャーナル紙で報じられたバチカンの決定は、非公式に北京政府に伝えられたもので、春に発効する予定だ。まだ取り消すことができる段階にある。

 

フランシスコ法王は、習近平国家主席との融和的歩み寄りで、カトリックの教義を決して売り渡してはならない。

 

むしろ、今バチカンに求められているのは、かつてポーランドの民主化運動への支援を行った法王ヨハネ・パウロ2世のような断固たる姿勢であろう。

(長華子)

 

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幸福の科学出版刊 『「太平天国の乱」の宗教革命家 洪秀全の霊言』 大川隆法著

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幸福の科学出版刊 『中国民主化運動の旗手 劉暁波の霊言』 大川隆法著

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タグ: バチカン  キリスト教  カトリック  法王  ヨハネ・パウロ  中国  

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