北朝鮮と韓国の軍事境界線上の地区・板門店の韓国側に建つ「自由の家」(画像は Wikipedia より)。

世界で最も危険な指導者の執務室の机の上に、日本に向けられた「核のボタン」が置いてある――。

想像したくはないが、これが事実である可能性は高い。

北朝鮮の金正恩委員長は、1日に朝鮮中央テレビで発表した「新年の辞」で、「核のボタンが私の執務室の机に常に置いてあることは、脅しではない現実であることを知らなければならない」(1日付読売新聞電子版)と述べた。

金氏は、アメリカ全土を射程に収めたことや、平昌五輪へ代表団を送る用意があることなども述べ、アメリカへの対決姿勢を改めて示した一方で、韓国に対して対話を行う可能性も示唆した。

日本のテレビなどを見ていると、北朝鮮が核・ミサイル実験をやめてくれさえすればいいという雰囲気も漂う。しかし、ここで対話という選択肢をとり、北朝鮮を核保有国として認めてしまってはいけない。

なぜなら、北朝鮮は人権侵害とテロを平気で行う国家だからだ。

本欄では、2018年1月号に掲載された、北朝鮮の「拉致問題」に20年以上取り組む弁護士のインタビューを紹介する。

(掲載元: https://the-liberty.com/article/13807/ )

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)名誉会長

藤野 義昭

プロフィール

(ふじの・よしあき) 1938年生まれ。61年中央大学法学部法律学科卒業後、会社員生活を経て、71年に32歳で司法試験に合格し、74年に弁護士となる。97年から拉致問題に携わる。「救う会」前会長。

――拉致問題は膠着状態になっています。

藤野(以下、藤野): 本来なら日本は、自力で解決できる国でなければならないと思うんです。

「凛とした」という言葉がありますね。凛とした気持ちを持っている国民がいて、国家があれば、自力で解決できると思います。いつまでもアメリカに守ってもらうようでは、正常な国家観は育ちません。

戦前なら軍を動かす事態

もし戦前に100人も日本人が拉致されたら、軍隊を動かしていたはずです。今はそうした発想ができない社会になってしまっています。

しかも、旧社会党の土井たか子委員長の時代には、同党内に共和国連絡部というのがあって、「拉致をしても差し支えない日本人」の氏名などを朝鮮労働党に伝えていたと言われています。

拉致問題に取り組んでいる弁護士の数が少ないのも問題です。日本全国に10人ほどしかいません。弁護士は基本的に親中国・親北朝鮮の人が多いので、拉致問題はあまりやりたくないテーマなのです。彼らの考え方は、極端に言えば、「守るべき人権と、そうでない人権がある」ということになります。

――日本が「凛とした国」になるには何が必要でしょうか?

藤野: 憲法9条を改正し、スパイ防止法を制定する必要があると思います。現在の法制度の下では、情報を盗みにくるスパイを捕まえることができません。これでは統治権が侵されてしまいます。国家の主権が守れない状態なのです。

また、核装備も考えるべきではないでしょうか。武器を持っていなければ、武器を持つ者に恫喝された時になすすべがありません。

やはり、拉致問題が起きたのは、これまで日本が侮られてきたからです。今、「凛とした国」になることが求められています。

北の核保有を止めるべき理由

――トランプ大統領に期待することは?

藤野: 重要な点は、北朝鮮が国家ぐるみでテロ行為を行う国だということです。

アメリカなどの超大国は核もミサイルも腐るほど持っているわけですよね。ということは、北朝鮮の「自衛のための核武装だ」という主張が成り立つわけです。北朝鮮に対して「お前の国だけは持つな」と言えるためには、「テロ行為を行う国家だから」というのが大事なポイントなのです。

トランプ氏が国連で「13歳の少女まで拉致した国だ」と言った時、北朝鮮は一言も反論できませんでした。これまで核武装反対については様々に反論をしてきたのに、です。

テロ国家だからこそ、核もミサイルも持ってはいけない。トランプ氏にはこの点を突いてほしいと思います。

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11月に来日したトランプ米大統領は、北朝鮮の拉致被害者やその家族と面会し、この問題に対する関心の高さを示した。その意義についても、「もし金正恩が(拉致被害者を)帰国させればとてつもなく大きなシグナルとなるだろう」と述べている。

いまだ日本政府が確認する拉致被害者は17人。実際には100人以上いると想定される。この問題に対する北朝鮮の立場は「解決済み」で、動く気配は見えてこない。

北朝鮮に核保有を許してはいけない。

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