教育無償化で手取りが増えないリスク 中小企業を苦しめる政策に反発の声

教育無償化で手取りが増えないリスク 中小企業を苦しめる政策に反発の声

 

《本記事のポイント》

  • 教育無償化の実現には、経済界が3千億円を負担する方針
  • 中小企業の代表が「新たな負担は厳しい」と発言
  • 新たな負担は、企業から賃上げの余力を奪い、逆効果になる可能性も

 

安倍政権が衆院選で公約にしていた「教育無償化」の大筋が固まった。

 

25日付朝日新聞によると、安倍政権は、認可保育園の3~5歳児は「無料」とし、認可外保育園の場合は、認可の保育料の全国平均である「月約3万5千円」を上限に助成。高等教育についても、住民税が課されない世帯(年収約250万円未満)を対象に授業料を免除するほか、保育士の賃金も、最大で月8万円を引き上げる方向で検討を進める。

 

政策規模は、約2兆円を想定。財源は、2019年の消費増税の税収1.7兆円を回し、残る3千億円については、企業の「事業主拠出金」の増額で賄う予定という。

 

 

三村会頭「中小企業にとって厳しい」と反発

注目したいのは、企業の事業主拠出金である。

 

拠出金は、従業員の賃金を基に算出され、現在、経済界は約4千億円を負担している。政府はこれを7千億円にまで引き上げる方針だ。

 

だが、「消費税財源だけでは不足する3千億円を企業に求める今回の案は、そもそも唐突感があった」(17日付日刊工業新聞)と報じられているように、産業界にとっては、降って湧いたような話。

 

日本商工会議所の三村明夫会頭は、「労働分配率でも、大企業が43%なのに対し、中小企業の労働分配率は70%で、付加価値のほとんどを賃金に回している。人手不足の中で防衛的な賃金の引き上げも実施しているなかで、中小企業にとって、新たな負担は厳しい」と発言している。

 

同会議所のHPにも、「2017年度は(拠出金の)料率0.23%で約4千億円規模となっているが、中小企業はその6割弱を負担していると推測される。従って、料率引き上げにあたっては中小企業の支払余力に基づいて慎重に検討すべき」「中小企業の労働分配率は70%超、小規模企業は80%超であることから、支払余力は高くない」などとする声明を発表している。

 

 

拠出金より、手取りに回すべきでは

約3千億円を拠出する企業の負担は、個人とは無関係に見えるが、そうとは言い切れない。本来、雇用者がそこにお金を回す余力があるのなら、賃金に還元されるべきではないか。

 

さらに拠出金は、赤字企業であっても、全ての企業が負担しなければならない。安倍政権は、税制の優遇措置を同時に行う予定だが、負担の増大をカバーできる見込みは立っていない。

 

つまり、今回の負担は、企業から賃上げの余力を奪う可能性がある。

 

拠出金以外にも、近年、最低賃金の引き上げや社会保険料の負担増など、企業にしわ寄せが行っている。それに追い打ちをかけるように、消費増税にも踏み切るつもりだ。

 

こうしてみると、安倍政権の政策は、実に、中小企業や赤字企業にとって厳しいものと言わざるを得ない。

 

衆院選では、教育無償化によって家庭の負担が軽くなるというイメージが先行し、まともな政策議論が行われなかった。もし、こうした政策が国民に広く知られていたら、衆院選の結果も変わっていたかもしれない。

(山本慧)

 

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タグ: 教育無償化  事業主拠出金  消費税  財源  赤字  負担  安倍政権  労働分配率  

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