消費者金融「武富士」元会長夫妻から長男への株贈与をめぐる訴訟で、最高裁が約1330億円の追徴課税を取り消す判決を言い渡し、国税側が逆転敗訴したことは、税金をめぐる根本的な問題を提起している。
贈与があった1999年時点の税制では、住所が海外にある日本人が、海外にある資産を贈与された場合、非課税になる。長男は、元会長夫妻からオランダ法人の持つ武富士株を贈与され、東京国税局は05年、約1650億円の申告漏れを指摘。長男は当時、武富士と香港子会社の役員で、国税当局は「住所は日本」と判断したが、今回、最高裁は「生活の本拠が日本だとは言えない」との判決を出した。これで国税当局の敗訴が確定し、国税当局は他の税務訴訟も合わせ、2000億円を返還する。個人への課税処分への取り消しでは過去最高額。
確かに元会長夫妻と長男との間には、贈与税逃れの意図があったのかもしれない。ただ、問題は、日本の富裕層がわざわざ海外に住所を移し、実際にそこに住まなければならないほど税金が高いということだ。 贈与税は、贈与額が1000万円を超えると、50パーセントの税率がかかる(相続税は3億円超で税率50%)
創業社長が3億円以上の財産を築くケースはいくらでもある。それを子供の代に渡そうとしたら、半分は政府に取り上げられるということが公正な社会だろうか。「格差をなくす」ということなのだろうが、現実は3代にわたって相続なり贈与なりをすれば、ほとんどすべての財産が政府に奪われるということになる。日本から富裕層をなくす仕組みと言われても仕方がない。江戸時代は「五公五民」(税率50%)で重税だと言われたが、それと同じことが現代でも行われている。
武富士は強引な取り立てなどで社会問題にもなったが、贈与税、相続税の問題はそれとは別だ。
現在は法改正がされ、海外に住んでいても課税対象になるという。そこまでして財産をむしり取っていく国税当局の“執念”はすさまじいものがある。結局は、3億円以上持っているお金持ちは、日本人をやめるのが一番いい選択ということになる。(織)