《本記事のポイント》
- 「経済制裁」に効果なし、「対話」はなおさら効果なし
- 数年前なら「ミサイルでの反撃」を今ほど怖がることはなかった
- 「核放棄」への最後の扉が閉まる前に「無血開城」を迫るトランプ
ここまでもつれ込んだ北朝鮮問題を前に、国際社会がまずすべきは、「存分に後悔すること」ではないか。
北朝鮮は15日の朝7時頃、「火星12」と見られる中距離弾道ミサイルを発射した。ミサイルは、北海道上空を通過し、襟裳岬東方の太平洋上に落下した。
「経済制裁」に効果なし、「対話」はなおさら効果なし
11日に国連安保理で決議された経済制裁は、北朝鮮の態度を変えるような効果を持たなかったことが、明らかになった。
経済制裁さえ効かない中、今さら「対話」をして状況が変わると、本気で考える人も少ないだろう。メディアで対話を訴える識者の多くも、「対話に勝率がある」と言っているのではなく、「少なくとも、軍事行動は嫌だ」という"消極的対話論者"に過ぎない。
対話、経済制裁、軍事行動……。どの選択肢も、閉ざされつつあるようにも見える中、とうとう「北朝鮮の核保有を認めるしかない」という"白旗論"も噴出してきた。どん詰まりだ。
数年前なら「核ミサイル」を怖がることはなかった
これが何年か前であれば、今ほど軍事行動へのハードルは高くはなかった。しかし、国際社会が北朝鮮の「時間稼ぎ」に乗せられてきた結果、そのハードルはどんどん上がり、問題は複雑化してしまった。仕事でも国際政治でも、「先延ばし」は大敵だ。
ここで、「あの時期に動いていれば」という後悔ポイントを確認していこう。
例えば2009年の段階では、北朝鮮の核は、ミサイルに積める性能ではなかった。
同国が2009年5月に行った核実験について、同年の防衛白書は「比較的短期間のうちに、核兵器の小型化・弾頭化の実現に至る可能性も排除できず」と分析するにとどまっていた。しかし、それから7年ほど経った2016年の核実験をもって、北朝鮮は核の小型化に成功してしまったようだ。
それまでの間であれば、仮にアメリカが軍事行動を起こしても、核攻撃による反撃に日韓がこれほど怯える必要はなかったのだ。
数年前ならミサイル発射は事前察知しやすかった
また、2009年の段階では、北朝鮮のミサイルは、発射前に察知して、破壊することが今よりも容易だった。
まず、燃料の性能が違った。ミサイルの燃料には「液体燃料」と「固体燃料」の2つがある。
「液体燃料」は、ミサイルを打ち上げる前に「注ぎ込む」作業が必要なため、どこから打ち上げるのかを事前に察知しやすい。一方、「固体燃料」であれば、事前にミサイルに積んでおけるので、撃つ前に察知されるリスクが低い。しかし、ミサイルの精度が落ち、品質管理が難しいなどのハードルがあり、高い技術力が必要だ。
北朝鮮はこの「固体燃料」の開発にも成功してしまった。
2015年に発射が公開された潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の「北極星1」や、2月に登場した「北極星2」は、固形燃料タイプだと言われている。さらに北朝鮮は5月、その量産を決めたという。
つまり、北に対して軍事行動を起こした際、反撃として発射されるミサイルを事前に察知して、破壊し切ることが、より困難になったのだ。
さらに、北朝鮮は「移動式のミサイル発射台」も開発した。ミサイル発射台が固定式であれば、米軍などが常時その動向をウォッチし、発射の兆候をつかむことができる。しかし、移動式の発射台が地下などから突然出てきてミサイルを発射する場合、事前察知はより難しくなる。
もう「後悔」をしないために
北朝鮮は時間を稼ぎながら一歩ずつ、自分たちが有利になる"技術的な橋頭堡"を築いてきた。そして気付けば、国際社会にとって「軍事行動」というオプションのリスクがどんどん高まってきたのだ。
アメリカも国際社会も、今思えばまだ小さかった「反撃リスク」を恐れ、問題解決を先延ばしにしてきた。しかし、先延ばしにすればするほど、対話の可能性は薄れ、同時に反撃のリスクも高まってきてしまった。
そして今、北朝鮮は来年にもアメリカ本土に届く核ミサイルを実戦配備すると言われている。その一線を越えれば、北朝鮮に核放棄をさせるハードルの高さは、一気に何倍も高くなる。
トランプ米大統領が「北朝鮮は炎と怒りに直面する」「対話は答えではない」といった言葉で、軍事行動への可能性を示唆している。それは、まだ米朝間には圧倒的な戦力差があり、北を核放棄させる「最後の扉」が閉まる前に動く必要があると考えているからだ。
確かに、金正恩氏に「国ごと破壊されたいか、それとも降伏するか」の選択を突きつけてこそ、「無血開城」という希望も見えてくる。
逆に、ここで再び「先延ばし」をすれば、数年後、今とは比べ物にならないほどの「後悔」をするだろう。
(須/光)
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