イランの首都テヘランのショッピング施設(Tappasan Phurisamrit / Shutterstock.com)。

《本記事のポイント》

  • イランでは犬をペットにする人が増え、イスラエルでは豚骨ラーメン店も出店
  • 一方、インドでは、神聖とされる牛の取引業者が襲撃されている
  • 古い風習をもとにする戒律は、イノベーションする必要がある

イランやサウジアラビアなどの中東の国々は、宗教上のタブーが厳しく、自由が少ない国と言われてきた。だがこうした国にも、少しずつ変化の兆しが現れている。

例えばイランの都市部では、犬をペットとして飼う人が増えている(8月31日付朝日新聞)。

これまでイランでは、犬は「不浄な生き物」として敬遠されてきた。これは、国民の9割を占めるイスラム教シーア派の歴史書の中に、「イスラム教徒が犬に触れることは、受け入れられない」と記されているためだった。その理由は、犬を媒介とした細菌感染の恐れがあるためとされている。

イランのペット犬ブームは、自由への憧れ?

だが記事によれば、イランの首都テヘランの空き地で毎週開かれる"犬の闇市"は、多くの家族連れで賑わい、公園などにはペット犬を連れて歩く人がちらほらいるという。またイラン北部のアルボルズ州では、政府や自治体から許可を得て、宗教指導者からも"お墨付き"を得た犬の販売業者が、人気を集めている。これに反発するイスラム教保守派の人々もいるが、「ペット犬の広がりは人々が自由を欲していることの表れと解釈できる」というテヘランのハラズミ大学のガレイモガダム教授のコメントも紹介されている。

また、中東イスラエルの商業都市テルアビブには、日本の豚骨スープのラーメン店が相次いで出店している(1月23日付朝日新聞)。

イスラエルは、国民の8割がユダヤ教徒で、残りの2割はアラブ系のイスラム教徒。両者とも、戒律で豚肉を食べることは禁じられている。だが開放的な都市テルアビブには、戒律を気にしない人が増えているため、「本物の味」として豚骨ラーメン店が人気だという。

インドでは神聖な牛を巡る襲撃事件も

一方、インドでは、ヒンドゥー教で神聖な動物とされる牛を巡り、襲撃事件が起きている。

インドは世界有数の牛肉の輸出国であり、イスラム教徒などが牛の取引を行ってきた。インドはヒンドゥー教徒が約8割を占め、彼らは牛を食べることを禁じられているが、残り2割のイスラム教徒やキリスト教徒は、牛を神聖視していない。

そうした中、牛取引業者がヒンドゥー至上主義者に襲撃される事件が多発しており、2010年以降、60回以上襲撃され、イスラム教徒など28人が殺害された。

宗教にも時代に合わせたイノベーションが必要

イスラム教などで犬や豚が不浄とされるのは、教えが説かれた当時、細菌感染の恐れがあったためとされている。また、ヒンドゥー教で牛が神聖視されるのは、神話にシヴァ神の乗り物として牛が登場するためだ。

だが、冷蔵庫などの保存技術やワクチンなどの医療が発達した現代では、犬や豚を不浄とする戒律は改めてもよいだろう。また牛を神聖視することは尊重すべきだが、人を殺すまでになるとやりすぎだ。

教えが説かれた当時と違い、現代は、科学技術や貨幣経済が発展した高度な情報社会だ。風習に基づく古い戒律を守り続けることが、国の発展を止めている面もある。普遍的な教えを大切に守りつつも、宗教にイノベーションを起こしていくことが必要だろう。

(山本泉)

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