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《本記事のポイント》

  • ニューヨーク・タイムズがリーク情報に基づき誤報を出した
  • 誤報への反省が見られない報道姿勢は、他のメディアからも批判を浴びている
  • トランプ氏への「偏見」が強いメディアと米国民のズレは今後大きくなるだろう

アンチ・トランプの代表格である、米紙ニューヨーク・タイムズ紙が誤報を出した。同紙は内部文書を入手したとし、このほど以下のような記事を報じた(1日付電子版)。

「ニューヨーク・タイムズが入手した内部文書によると、トランプ政権は、白人への差別と見なされる『積極的差別是正措置(affirmative action)』を巡って、大学に対して調査や告訴をするため、司法省の公民権部門の人員を見直す準備をしている」

この「積極的差別是正措置」とは、大学入学に際して、黒人や女性などの従来排除されがちだった志願者を、白人の志願者よりも優先的に合格させる制度のことを指す。米国内でも「逆差別」だとして、撤廃を求める声もあがっている制度だ。

ニューヨーク・タイムズは、手に入れた内部文書から、トランプ政権がこの制度の見直しを図っていることが判明したと報じた。

「裏取りのない情報に基づいた報道」

しかし2日、これが誤報だと発覚する。記者会見で同紙の報道について質問を受けたサラ・サンダース報道官は、「ニューヨーク・タイムズの報道は裏取りのない情報に基づいたもの」だと断じた。司法省のサラ・イスガー・フローレス報道官も報道を否定した。

むしろ、報道とは正反対の事実が発覚した。司法省によれば、オバマ政権だった2015年5月に、アジア系アメリカ人に対する差別に関して行政への不服申し立てがなされていたが、前政権がそれを未解決のまま残しておいたため、トランプ政権下で司法省が調査を進めようとしているという。

これを受けて同紙は2日、アジア系アメリカ人が人種差別に苦しんでいるという旨の記事を掲載した。「積極的差別是正措置のバトルは新たな焦点を迎えた。 アジア系アメリカ人だ」という見出しから、あくまで誤報ではなく「新事実」が発覚したという体裁にしたい思惑がうかがえる。

こうしたニューヨーク・タイムズの報道姿勢は、他メディアから批判を浴びている。

米誌ザ・ワシントン・イグザミナーは、「ニューヨーク・タイムズは積極的差別是正措置の報道に関して、本当にしくじったようだ」と見出しを打ち、同紙の誤報がメディア不信を過熱させるものだとして批判(3日付電子版)。加えて、アジア系アメリカ人への差別は広く知られているにも関わらず、内部文書がそれに関係するものだと思いつかなかったのかと、ニューヨーク・タイムズの報道姿勢に疑問を呈している。

保守系のニューヨーク・ポスト紙も、ニューヨーク・タイムズの誤報を指摘した上で、大学入学でのアジア系アメリカ人に対する差別の深刻さを明らかにした(3日付電子版)。

フェアな秩序を目指すトランプ

実際、アジア系アメリカ人への差別は根深いもののようだ。プリンストン大学の調査によると、アジア系アメリカ人が白人の子供と同じレベルの私立大学に入るためには、SAT (大学進学適性試験)で140点も高く得点しなければならないという。こうした現状をおかしいと考えた人々が政府に対策を求め、トランプ政権が手を打とうとしているということだ。

人種差別主義者や白人至上主義者だと評されるトランプ氏だが、行動を一つひとつ紐解くと、そうした評価が誤解だということが分かる。

選挙期間中にも、トランプ氏は国境に壁を建てるという公約を掲げたが、これは違法移民が麻薬売買などによってアメリカの治安を乱していることへの対策であり、民族への差別から来るものではない。むしろ、技術や学歴の高い移民は歓迎するとしており、2日には移民受け入れ条件に関する法案も発表した。

トランプ氏は、差別観に基づく白人至上主義国をつくろうとしているのではなく、努力をした人が正当に評価されるフェアなアメリカ秩序をつくろうとしている。

ニューヨーク・タイムズなどのリベラルメディアがトランプ氏の真意を知ることはしばらくなさそうだが、アメリカ国民が真実に気づくのは時間の問題だろう。国民のリベラルメディアへの評価が今後どう変化するかに注目したい。

(片岡眞有子)

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