《本記事のポイント》

  • ドイツのG20で初の米露首脳会談
  • 会談は2時間以上におよび、シリア停戦に合意
  • 国際社会の課題を解決する糸口は、米露の関係強化にある

20カ国・地域による首脳会議G20が、ドイツ・ハンブルグで7日から始まった。首脳会議では、主に世界経済や貿易、地球温暖化対策などが協議された。

各国は、自由貿易を推進し、保護貿易と戦う姿勢でおおむね一致。ドナルド・トランプ米大統領の経済政策や、イギリスのEU離脱を批判する形となった。

地球温暖化に関しては、国際的枠組みである「パリ協定」に沿って各国が協力していくことを再確認した。トランプ大統領は6月、「パリ協定」から離脱することを表明しており、国際社会からの批判が続いている。

「これ以上ないほどに意義深い会談」

そんな中、トランプ政権になってから初めて米露首脳会談が行われた。電話会談は何度か行っているが、直接会っての会談は初。

当初予定していた30分を大きく上回り、2時間以上も続いた。会談にはティラーソン米国務長官とラブロフ露外相も参加し、シリアや北朝鮮、ロシア政府がアメリカ大統領選に影響を与えた疑惑など、米露が抱える問題について話し合ったという。

会談が始まる前から、トランプ大統領はツイッターで「ウラジーミル・プーチンら世界の指導者との会談を楽しみにしている。たくさん話すことがある」と発信しており、ロシアを重要視していることを明らかにしていた。

会談が終わった後にも、ティラーソン国務長官は「これ以上ないほどに意義深い会談だった。私達には話すべきことがたくさんある」と報道陣に語っており、ロシアとの友好関係を望む姿勢を示した。

イスラム国、北朝鮮、米露協力が解決するもの

会談の最も大きなテーマは、シリアに関する問題だ。政府側と反政府側、イスラム国の三つ巴の戦いが続くシリアだが、米露は立場を異にする。アメリカはアサド政権打倒を目指す反政府側を支援し、ロシアはアサド政権を支援している。

イスラム国の弱体化のためには米露の協力が不可欠だが、今回の会談で、7月9日にシリア南東部で停戦することで合意した。

核・ミサイル開発を続ける北朝鮮への対応についても、トランプ大統領はロシアに協力を求めた。北朝鮮に圧力をかけるアメリカだが、ロシアは北朝鮮と交流を続けているからだ。ロシアが対北制裁に本格的に参加すれば、強力な囲い込みが完成する。

また、アメリカ大統領選挙にロシアが影響を与えたという疑惑に関して、プーチン大統領は改めて強くこれを否定した。

米メディアは冷戦時の思考を変えられない!?

トランプ政権は"ロシア疑惑"で米メディアに糾弾されている。その根底には、冷戦時の思考を変えることができず、いまだにロシアを仮想敵国と見なす風潮がある。しかし、先述したイスラム国や北朝鮮など、国際社会の課題の中には、米露が協力することで見通しがつくものがいくつもある。

ロシアを仮想敵国と見なすのではなく、戦略的パートナーとして友好関係を築いていく必要がある。今回のシリア停戦が、その第一歩となることを願いたい。

(片岡眞有子)

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