《本記事のポイント》

  • 静岡県吉田町が管内の小中学校の夏休みを短縮する方針。
  • 夏休みの必要性が薄らいでいる面もある。
  • 「仕事のリストラ」が先決では?

静岡県吉田町は、来年度から公立小中学校の夏休みを最短で10日間に短縮する方針を決め、このほど保護者への説明会を開始した。

背景には、教員の長時間労働問題がある。吉田町での昨年度の時間外勤務は、小学校で月平均57.6時間、中学校で90.1時間にのぼった。年間の授業日数を増やし、一日当たりの労働時間を減らして、授業の質を向上させることが狙いだ。

なぜ夏休みがあるのか

夏休みの正式名称は「夏季休業」といい、学校教育法で規定されている。期間などは、各市区町村の教育委員会が決めることになっている。

目的としては、暑熱・寒冷からの回避、盆や暮れなどの年中行事への配慮、普段では体験できないことを経験する課外授業的な意味合いなどが挙げられている。

夏休みがある理由には、授業が暑熱により困難であったという時代背景がある。しかし、現在の普通教室では、公立の小中学校で32.8%、公立高校では61.4%が冷房設備を備えており、年々普及率は高くなっている(平成26年度文部科学省調査)。

つまり、冷房設備の普及によって、夏に長期休暇が必要である理由がなくなりつつあるということだ。

また、夏休みの期間は1カ月と長く、「普段経験できないことする」という点が親の負担にもなっているという指摘もある。生活リズムが崩れたり、学習習慣がなくなったりするなど、夏休みを有効的に使えているのか疑問視する声もある。

「仕事のリストラ」が先決では?

ここで問題になるのは、「労働時間を短縮すれば、教員の長時間労働は解決するのか」ということだ。

教員の時間外勤務は、厚生労働省が発表する一般労働者の月平均14.4時間(2016年度)に比べて圧倒的に長い。しかし、単に労働時間を短くするだけでは根本的な解決にならない。まずは、非効率な仕事がないかどうか点検してみるべきではないか。

例えば、「学習指導案」は、本当にここまで決める必要があるのかというほど、細かく作成しなければいけない。手が回らない教員のために、教科書会社が指導案を作成・提案することもある。指導案は、勤務評定の指標にもなっているため、「ムダ」があったとしても、なくすことができないというわけだ。

制定された当時は意味があっても、現在では意味が薄れている仕事は数多くある。現場の先生たちが、より本質的な仕事である「生徒の学力の向上」に力を尽くせるよう、仕事のリストラや見直しをしていくべきだろう。

長時間労働が問題視される今、「働き方」を考えることは大事だ。しかしそれと同時に、本当に学習の質を高めるものになっているかをチェックする必要があるだろう。(手)

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