広く「偉人」と称される人々は、献身的な妻に支えられていることが多いもの。しかし、そのような内助の功は、往々にして語られません。本欄では、そうした「妻」に焦点を当ててみたいと思います。

今回は、不平等条約の改正に尽力した井上馨と陸奥宗光の妻についてです。

「日本社交界の華」と称された――井上武子(いのうえ・たけこ)

井上馨(かおる)は、明治政府の初代総理大臣・伊藤博文の下で、初代外務大臣を務めた人物です。

当時、日本は諸外国との不平等条約に苦しんでいました。領事裁判権を認めさせられ、日本国内で犯罪を行った外国人を日本の法律で裁くことができず、関税自主権がないことで、自国の輸出入品に税金を課すこともできませんでした。

そんな中で、井上は、日本を西洋と対等の国にすべく、まい進します。