《本記事のポイント》

  • 「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」が運営開始から10年
  • 子供の命を救うため、養子縁組や里親制度がある
  • 親子の縁は血のつながりを超えたもの

熊本県の慈恵病院が設置した、「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)が、運用開始から10年を迎えた。

慈恵医院は、もともと「望まない妊娠」をした女性たちの相談窓口を設置していた。ただ、新生児の殺害や育児放棄を防ぐため、親が何らかの理由で育てられなくなった新生児を預かる活動として赤ちゃんポストの運営を行うようになった。今や、親が育てられない新生児を匿名で預け入れる、国内唯一の施設となっている。

2015年までの9年間に、125人の子供が預けられたが、そのうち104人は生後1か月未満の新生児だった。預けた理由は、多い順に「生活困窮」(32件)、「未婚」(27件)、「世間体・戸籍に入れたくない」(24件)となっている。

赤ちゃんポストの設置には賛否があるが、キリスト教系である慈恵医院も、赤ちゃんポストの設置は、「神様から授かった尊い命」を何とか救うための「最終手段」であるとして、できるだけ事前に相談を行うことを推奨している。母親が病院に相談することができれば、「自分で育てる」「一時的に子供を預ける」という選択肢を取ることもあるという。

この世に産まれた赤ちゃんが育つために

親に事情があって育られなかったとしても、子供がこの世で生きていくための選択肢は、本当はいくつかある。

その方法の一つが、里親制度の利用や養子縁組だ。最近は不妊に悩む夫婦も多く、「出産できないけれど、子供を育てたい」という人は数多くいる。また、「他の夫婦に自分の子供を育ててもらえる」可能性があることを知っていれば、中絶を選択する人も減るかもしれない。

ただ、日本ではまだ里親や養子縁組制度が一般的ではない。特に、戸籍上も完全な親子になる特別養子縁組は、受け入れ可能な年齢が5歳までと決まっているなど、条件が厳しいのが現状だ。しかし、大きな理由の一つには、「血のつながっていない子供」への抵抗感が挙げられるだろう。

だが、人間は生まれる前に、自分の人生を設計してくるが、魂を磨くために、あえて厳しい人生を選ぶ人もいる。そして親と子は、どのような形であっても、必ず約束して生まれてきている。宗教的には、親子の絆は肉体だけではなく、魂のレベルで存在している。育ての親であっても、地上における魂修行として、何かしらの約束をしてきたかもしれない。

赤ちゃんの命を救い、行き場のない母親たちを救うためにも、人間の本質をどう見るかが問われている。(中)

【関連記事】

2008年6月号 養子縁組・里親制度を考える

http://the-liberty.com/article.php?item_id=533

2016年5月2日付本欄 出生前診断で中絶増加 障害者の可能性を考える

http://the-liberty.com/article.php?item_id=11282