エジプトの政変により、今後の政権で大きな役割を担うと見られている「ムスリム同胞団(the Muslim Brothers)」の指導部メンバー、Essam El-Errian氏が、11日付けインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙に「ムスリム同胞団の望むこと」と題して寄稿している。いま最も注目される組織の公式声明的内容なので、要旨を紹介する。

・我々は、改革と前進のための国を挙げた努力に参画しようとしている。自分たち独自の課題を掲げているわけではなく、全エジプト国民の要求に応えようとしている。1928年の創立以来、我々は常に漸進的改革を唱え、一貫して暴力に反対してきた。

・1954年以来、我々は政府から非合法組織の扱いを受けてきたため、政治システムに参画させてもらえていない。だが、ほとんど言及されない事実として、エジプト行政裁判所は1992年、我々のグループを解体すべき法的根拠はないと言明している。

・「エジプトが取りうる選択肢は、完全に世俗的でリベラルな民主主義体制か、独裁的神政国家(authoritarian theocracy)のどちらかである」という意見には組しない。欧米の世俗的でリベラルな民主主義だけが民主主義として正当性を有するわけではない。

・ エジプトでは文化面でも伝統面でも宗教が重要な位置を占めている。我々は自由と正義(freedom and justice)という普遍的尺度に基づく民主的市民社会の確立を思い描いているが、これらの尺度はイスラム教の中心的価値観でもある。民主主義はイスラムの教義と両立し、それを補強するものであると考えている。

日本では先の戦争の記憶から、宗教が政治と結びつくと全体主義になるとイメージされることが多い。だが、世界宗教はいずれも個人の自由や幸福、善悪の区別といった普遍的価値を何らかの形で教えの中に含んでおり、必ずしも民主主義と相容れないものではない。上記の内容がどこまで本音かはさておき、「世俗的な民主主義か、独裁的な宗教国家か」という二者択一は短絡的との指摘は、グローバルな宗教的常識に疎い日本人の参考になるだろう。(司)

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