2017年5月号記事

トランプに続く「まさか」は欧州で起きる

EU危機をサッカーで読み解く

ヨーロッパと言えばサッカーだ。 各国には強豪チームがひしめき、しのぎを削る。

だが今年は、サッカーよりも、EU(欧州連合)が“熱い"。

崩壊の危機に立つEUの問題に迫る。

(編集部 山本慧)


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EU危機をサッカーで読み解く - トランプに続く「まさか」は欧州で起きる Part1

EU危機をサッカーで読み解く - トランプに続く「まさか」は欧州で起きる Part1


28のEU加盟国から直接選挙で選出された議員(定数751人)で構成される欧州議会。国境を越えた選挙では世界最大で、写真の議場はフランスにある。Ikars / Shutterstock.com

今年はヨーロッパ主要国で選挙が相次いで行われる重要な年だ。

その初戦となるオランダ議会選挙が3月中旬に行われた。多くのマスコミが批判的に報じて注目が集まっていた、EU離脱を唱える右翼政党・自由党は、第2位の議席を確保して躍進する結果となった。

"寛容"な国であるオランダで、過激な主張を行う政党の躍進は世界に衝撃を与えている。この流れは、フランスやドイツの他の右翼政党の台頭を後押しすると見られる。各国で離脱の動きがあるEUで、今何が起きているのか―。

日本人にはいま一つピンとこないEUだが、"ヨーロッパを代表したチーム"と考えればイメージしやすいかもしれない。

EUは、ヨーロッパが一つのチームとしてまとまることで、アメリカや日本を超え、世界一の“大国"になることを目指す。 現在、28カ国が参加している。

EUチームの"エースストライカー"は、経済力を持つドイツと、核兵器を持つフランスだ。両国は第一、第二次大戦で戦った敵同士だが、再び戦争を起こさないという決意から、新たにヨーロッパチームを作ろうとした。

きっかけは、両国を含む6カ国が参加し、1951年に結成した「欧州石炭鉄鋼共同体」。戦争の資源になる石炭と鉄鋼を共同で管理することで戦争の芽を摘もうとした。

その後、同組織は司法や安全保障、通貨などでも、ヨーロッパの統合を進めた。日本にプロサッカー「Jリーグ」が誕生した93年に、現在のEUへと発展した。ベートーヴェン作の交響曲第9番第4楽章の『歓喜の歌』が"国歌"に当たる。

このように、 EUがつくられた表向きの目的は反戦だが、実態は、経済力のあるドイツが強くならないように、フランスが資源の共同管理を呼びかけたことにある。簡単に言えば、才能のあるエースへの"嫉妬"だ。

次ページからのポイント

招かれざる"選手"を獲得

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インタビュー / イギリスはなぜEUを離脱したのか? ラジーン・サリー氏