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《本記事のポイント》

  • 日独両首脳が自由貿易を推進する方向性で一致
  • 自由貿易を掲げているが、対米貿易での利益を失いたくないだけ
  • 哲学のない日本外交は世界に通用しない

安倍晋三首相は20日、ドイツ・ハノーバーでアンゲラ・メルケル独首相と会談した。

両首脳は、日独が協力し自由貿易体制を主導していくという考えで一致。北朝鮮による核実験およびミサイル発射に関しては「新たな段階の脅威である」とし、日米欧の連携を強化する必要があるとした。

また、5月にはイタリアで主要国首脳会議(サミット)が開催されるが、これに向けても相互に協力していくことを確認した。

安倍首相は会談後の共同記者会見で、「世界で保護主義の動きが大きくなる中、日欧が米国と協力して自由貿易の旗を高く掲げ続けなければならない」と強調し、メルケル首相も「日本とEUの協力推進を確認した」と述べた。

自由貿易という大義名分

自由貿易を守るというもっともらしい“言い分”を掲げたが、結局のところ、日本とドイツは、貿易赤字の是正を求めるアメリカを牽制したいというのが本音であろう。

両国はアメリカの貿易赤字国のうち2位(日本)と3位(ドイツ)を占めており、表だって「アメリカには貿易赤字をがまんしてほしい」とは言えない。そこで、自由貿易という“大義名分”を持ってくることで、自国の利益を守ろうという意図が見え隠れする。

哲学という軸のない日本外交

また安倍首相は、2月の日米首脳会談でアメリカとの関係強化を訴えたばかり。今回の会談は、アメリカの貿易政策に対する批判と受け取られかねず、トランプ米大統領の目には不誠実な言動と見えるだろう。

どちらにもいい顔をしつつ、結局、自国の立場を明確にしない日本外交の限界が浮き彫りになったと言える。

実際、アメリカとドイツが反目している「移民・難民問題」への言及はなかった。もし日本が、真に両国の間を取り持ちたいと考えているのなら、アメリカの立場を理解する発言を発してもよかっただろう。

異なる立場をとる国々に対する日本の“八方美人的”にふるまう外交は、世界の橋渡し役になれるわけがなく、せっかく築いてきた国際社会の信頼をも失いかねない。哲学という軸のない外交から、自国の立場を明確に示す外交への転換が求められる。

(片岡眞有子)

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