2016年11月ソウルで行われた朴槿恵大統領退陣を求めるデモ(Brad Ko / Shutterstock.com)。

《本記事のポイント》

  • 朴大統領が罷免され、60日以内に大統領選が行われる。
  • 次期大統領候補が親北派になる恐れがある。
  • 朝鮮半島が不安定化する中、日本には国防の強化が求められる。

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の罷免が、10日に決定した。大統領が弾劾裁判で失職するのは、韓国では初めて。60日以内に大統領選が実施される。投票日は5月9日が有力視されている。

韓国が親北になるおそれ

朴氏が友人の崔順実(チェ・スンシル)被告に秘密文書を流出させたことなどに対し、憲法裁判所は違法行為と認定。裁判官8人の全員一致で罷免が決定された。

罪を犯した大統領が国民の信頼を失い、失職したわけだが、隣国の日本にとって、この問題は新たな危機の予兆と捉えるべきだろう。

次期大統領に、北朝鮮と親和性が高い人物の当選が予測されている。現在支持率トップとされる、最大野党「共に民主党」の前代表・文在寅(ムン・ジェイン)氏は、親・北朝鮮として有名だった盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の側近を務めていた。次点の候補も「共に民主党」所属の革新派である。

もし文氏などの親北派が大統領となれば、在韓米軍に配備される予定の高高度迎撃ミサイルシステム「THAAD」(サード)も、配置されなくなる恐れもある。そうすれば、北朝鮮の核の脅威はますます強まる。日本としても対岸の火事ではない。

背後にある中国の思惑という指摘

先日、マレーシアで金正男(キム・ジョンナム)氏が殺害され、北朝鮮の関与が取り沙汰されている。この事件について、ある専門家は「今回の殺害に至った背景には、中国の『Go』サインが出たからではないか」という見方を提示する。

「朴大統領の訴追問題で韓国の政治が機能不全に陥っている中、中国は『韓国に駐屯する米軍を朝鮮半島から追い出す絶好のチャンス』と考えた。今後、韓国に北朝鮮寄りの政権が誕生し、朝鮮半島における北朝鮮の支配力が高まって米軍が追い出されれば、中国の悲願が達成される。そこで、北朝鮮内部を一枚岩にするために、これまで保護していた金正男の殺害を『良し』とした」

もちろん、真偽は不明だが、今後、韓国に北朝鮮寄りの政権が生まれれば、米軍が朝鮮半島から撤退するという事態も起こり得るだろう。そうすれば、「北朝鮮による半島の統一」も夢物語ではなくなる。

日本は一刻も早く国防強化を

北朝鮮は6日にも、日本の排他的経済水域(EEZ)内にミサイルを落とした。核保有国である中国や北朝鮮が着実に軍事拡張しているのに対して、日本の国防はあまりにも無防備だ。

混乱した朝鮮半島は、日清戦争の直前にも似た戦略環境にある。

日本は自国を守るため、現実的な対抗手段を考えなくてはならない。アメリカとの協力を強め、アジア諸国とも連携して自国の防衛を強化すべきだ。今、真剣に国防強化を進めなければ、手遅れになる段階に近づいている。

(片岡眞有子)

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