《本記事のポイント》

  • 米WSJ紙ではインドIT企業社長がまるで被害者のように掲載された
  • 一方別のインタビューではトランプ大統領の「国内回帰」を支持
  • アメリカ経済の復活は世界各国に好影響を与える

アメリカと取引をする外国企業は、必ずしも全てが、ドナルド・トランプ大統領による「米国第一主義」が自社にとって不利益と考えているわけではない。インドに本社を置く世界有数のIT企業・インフォシスがその例だ。

トランプ新大統領は、海外に工場を持つ米企業に対して、国内へ工場を戻すよう働きかけている。この流れに伴い、米企業から業務委託を受けている海外企業にも、大きな影響が及ぶと危惧されている。

米ウォールストリート・ジャーナル(20日付)の一面に、そんな企業の一つであるインドの大手ソフトウェア企業、インフォシスのCEOであるヴィシャル・シッカ氏や、インドの主要IT関連企業が加盟する団体である、インド・ソフトウェア・サービス協会の関係者などによる、トランプ大統領の政策への見解が掲載された。

紙面では、「我が社のような企業は今までの慣行に一定の影響を受ける可能性があり、我々はそれに適応しなければならないだろう」というシッカ氏の発言などが紹介され、あたかも、トランプ大統領の過激な政策によって甚大な被害を受ける企業トップという図式で報じられている。

国内の雇用増加で市場は活性化する

しかし、シッカ氏は別のインタビューで、「国内回帰」政策への支持を表明している。

米大手ニュース局CNBCが行ったインタビューに対し、同氏はこのように答えている。

「次期大統領(トランプ氏)は、彼自身が実業家でもあります。そして、ビジネスマンや私などは、政府に対して、改革がしやすく(innovation friendly)、ビジネスがしやすく(business friendly)、企業家精神を持ちやすい(entrepreneurship friendly)政権となることを期待しています。なので、我々が、価値を提供すること、改革を提供することを目指す限り、心配はないでしょう」

CNBCの記者はこれに対して、インフォシスが米国に最大のマーケットを持つ海外企業であることを指摘。いわば、「アメリカから仕事や雇用を奪っている同社にとって、トランプ大統領の政策は友好的なものなのか」と、シッカ氏の本意を探った。それに対して、シッカ氏は自身も「アメリカ国民」であることに言及したうえで、次のような趣旨で「国内回帰」政策を支持した。

「AI(の発展)など、世界で起こっていることを考慮し、長期的視点から見れば、アメリカやオーストラリアなど、その土地での雇用を進め、市場を活性化する必要があります」

一般的には「米国第一主義」の“えじき"になると言われるインフォシスのCEOがこのような認識を示したことは、注目に値する。

「ナショナリズム」で世界を豊かに

トランプ大統領の国内回帰政策は、「グローバリズム」が叫ばれる現代において、時代錯誤的な「一国至上主義」だと批判を受けている。これまで、人件費の安い国で造ったものを他国で売ることによって富を得ていた企業からも、不安の声が聞こえている。

しかし、シッカ氏が話すように、長期的な視点で考えれば、この国内回帰の動きはアメリカ経済のみならず、他国の経済にも好影響をもたらすものだ。アメリカに工場を戻し、雇用や所得が増えることで、市場は活性化する。アメリカ国内での購買意欲が高まれば、諸外国の企業も当然潤う。

アメリカ世論や、アメリカと取引する企業は、この革新的な改革に対していまだ不安を隠せないようだが、時間が経つにつれ、シッカ氏のように、トランプ大統領のビジョンを理解する人々が増えるだろう。

トランプ大統領の政策によって、世界がどう変わっていくのか、目が離せない。

(片岡眞有子)

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