2017年3月号記事

経営者の立場からの本当の「働き方改革」(2)

残業カットでも業績アップできる!

電通社員の過労自殺問題をきっかけに、政府が長時間労働の取り締まりを強化している。
とはいえ、仕事量は急に減らせない。倒産しても政府は責任を取ってはくれない。
勤勉に働く社員が増えてこそ企業は発展するが、働き過ぎも生産性を落とす。
そんな悩みを抱える経営者も少なくないだろう。
「経営者の立場からの働き方改革」二回目は、残業時間を減らしつつ業績をアップさせている企業の生産性向上の努力を紹介する。

(編集部 小川佳世子、片岡眞有子)

CASE1

渡邉商事

渡邉暁社長

時短と高品質を両立させる

大小さまざまなアルミ製品を生産・販売している渡邉商事(京都)。

短い納期で高品質の製品を提供することで取引先の信用を得て、業績を伸ばしている。時短と品質向上の両立の秘訣を聞いた。

渡邉商事は、他社に真似できない技術とスピードで、ここ数年、年間数億円の営業利益を確保している京都の優良企業だ。海外企業との直接取引も行っており、1年半前にはインドネシアに初の海外子会社を設立した。

人材確保への投資

だが、取引先からの要求レベルは年々高まり、競争も激化している。夕方5時に「明日の朝までに納品してほしい」という注文が入ることも珍しくない。宅配便の受付時間を考えるとリミットは3時間だ。

そんな難題にも応え切るため、同社は人材確保に時間と資金を投資してきた。働き手が減る中、何か手を打たなければ、大企業に人手を取られてしまう。活路を見出したのは海外。ベトナムやインドネシアに採用担当者を派遣し、現地で採用する。渡邉暁社長は、「技術や知識も大事ですが、『顧客の要求に応えたい』という情熱と理念を共有できる人物かどうかを見ます」と言う。

こうして採用した大切な人材には教育投資を惜しまない。今や半数近くが海外出身の社員だが、彼らには仕事だけでなく、日本になじめるよう、生活周りの指導も徹底する。

日本人社員に対しても、読書や学習を強く勧め、「考えることができる人材」へと導く。

次ページからのポイント

付加価値を考え続ける渡邉商事

残業半減でも利益アップしたセントワークス

経営コンサルタント 吉越 浩一郎インタビュー

本当の働き方改革とは