退任まであと1カ月を切ったオバマ米大統領が、ロシアに対して新たな制裁を課した。

事の発端は、6月に民主党のコンピューターがサイバー攻撃を受け、党幹部のメールが流出した事件だ。これを受け、アメリカ政府は10月に、大統領選挙に影響を及ぼそうとしたロシア政府の仕業だと発表した。

オバマ大統領は12月29日(現地時間)、報復措置を発表。ロシアの情報機関とその幹部などに制裁を課すとともに、アメリカに駐在しているロシア政府の当局者35人に国外退去を命じた。

オバマ大統領は20日にもロシアのクリミア併合に対抗するため、ロシアの金融機関幹部や企業・団体への経済制裁を発表するなど、制裁措置を強化している。トランプ氏就任まで1カ月を切ったこの段階において、ロシアとの関係改善を図るトランプ氏をけん制する形だ。

本件に対してトランプ氏は、「今はアメリカにとってより大きく有益なことに取り組む時期だ」と述べ、オバマ大統領の施策を批判した。それと共に、「最新の状況を把握するため、来週、情報機関の幹部たちと会う」と、事実究明を急ぐ姿勢を示している。

ロシアを嫌うオバマ大統領

オバマ大統領の行動は、さも、「ロシアの不正な関与によって、アメリカ国民の意思に沿わないトランプ政権が誕生した」と糾弾しているかのようだ。

しかし、ロシア政府の関与が決定したわけではなく、あくまで「疑惑」段階でしかない。このような制裁を課したところで、いたずらに米露の関係悪化を招くだけであるということを、オバマ大統領は認識しているのだろうか。どうも、オバマ大統領は冷戦での米ソ対立をいまだに引きずっているようだ。

新たな米露関係への期待

オバマ政権下において、米国はEU諸国と共同して、ロシアに経済制裁を課すなどして、孤立させてきた。日本政府もオバマ大統領に追随。その結果、ロシアに残された「協力者」は中国しかいないという状況も生まれた。

しかし、ロシアと中国の協力関係が密接になれば、「ロシア・中国 対 アメリカ率いる西側諸国」という構図が完成し、冷戦時代の再来が危惧される。

覇権を拡大する中国の暴走を防ぐためにも、ロシアと中国の接近は避けねばならない。いつまでも過去の関係にとらわれていては、新たな火種を生みかねないのだ。アメリカとしても、大戦の危機は望んでいないだろう。

上記のトランプ氏のコメントは、オバマ大統領とは対照的である。トランプ氏は、親露的な国際石油メジャーのエクソン・モービル会長兼最高経営責任者(CEO)のレックス・ティラーソン氏を国務長官に指名すると発表するなど、過去にとらわれることなく、ロシアとの建設的な協力関係を築くことに意欲を見せている。

トランプ政権の始動によって、建設的な米露の協力関係が築かれることが期待される。オバマ大統領も、次の政権に禍根を残す判断は避けるべきではないか。(片)

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