2017年2月号記事

来日特別インタビュー

アクトン・インスティテュート・ディレクター

キショア・ジェヤバラン

プロフィール

(Kishore Jayabalan) アメリカ・ミシガン大学で政治学および経済学の学位を取得。ワシントンの労働統計局で国際エコノミストとして勤務した後、トロント大学で政治学の修士号を取得。国連オブザーバーなどを経て、現在、自由主義を掲げるシンクタンク「アクトン・インスティテュート」のローマ支部ディレクターを務める。

自由主義者から見た現代の経済問題

自由とは「すべきことをする権利」

経済的自由と信仰との両立を目指して活動するシンクタンクの専門家に、TPPやイギリスのEU離脱について話を聞いた。

(編集部 長華子)

――はじめにアクトン卿の思想とあなたのシンクタンクについて教えていただけますか。

ジェヤバラン氏(以下、ジ): アクトンは、19世紀のイギリスの歴史家で、「権力は腐敗しやすい。絶対権力は絶対に腐敗する」という言葉が有名です。まとまった著作を遺したわけではないので、一般にはよく知られていませんが、政治や宗教、自由について探究しました。

彼は、 自由とキリスト教は切っても切れない関係にあると考えていて、「宗教を取り去ることで人間は自由になる」というフランス革命の主流派の考えに真っ向から反対していました。その根底には、自由とは、「したいことをする権利」ではなく、「すべきことをする権利」だという考えがありました。

私の所属するアクトン・インスティテュートは、こうした彼の自由についての考えを経済に適用すること、そして、宗教的リーダーに経済思想を学んでもらうことを目的として創られたシンクタンクです。

先日、アメリカで、我々のシンクタンクの役員を10年務めたベッツィー・デボス氏が、ドナルド・トランプ次期米大統領に教育長官として選ばれました。彼女は学校間の競争を促すバウチャー制度を広げるなどして、教育界に自由主義的な改革を実現していくでしょう。