日銀は、長期金利の上昇にともなって、初めて「指し値オペ」と呼ばれる公開市場操作を17日、行った。

「指し値オペ」とは?

「指し値オペ」とは、日銀が利回りを指定して国債を買い取ることで、金融政策手段の一つ。これまでは「買いオペ」といって、買い入れる国債の額を指定していた。

市場に現金を供給し、投資を活発化させるという目的は同じだが、「買いオペ」では買い入れる額が決まっていた。つまり、「制限があった」。しかし、今回の「指し値オペ」は、0%程度の長期金利目標に向けて市場から「無制限に」購入するというものだ。

この点で、「指し値オペ」は国債の利回りをコントロールするための、より強力な手段と言える。

なぜ長期金利が上昇しているのか

しかし、そもそも今回の長期金利の上昇は、アメリカの次期大統領であるドナルド・トランプ氏が掲げる政策で、米国内の景気が良くなるという期待により、アメリカの長期金利が上昇したことに関連して起きている。

景気が良くなれば、株を保有したほうが利益が得られるため、アメリカでは国債を売る動きが強まり、国債の利回りが上昇。それにともない長期金利も上昇した。

日本でも、アメリカに投資する動きが起こっていることと、アメリカの景気回復にともなって日本の景気も回復するだろうとの期待から日本国内の株を買う動きが活発になっていることで、国債が売られ、国債の利回りと長期金利が上昇していると考えられる。実際、日本国内の株を買う動きは活発になっており、株価はジリジリと上昇している。

金融政策だけでは限界

したがって、今回の長期金利の上昇は、ある種、経済の自然な流れによってもたらされていると言える。もともと長期金利は、様々な市場参加者の思惑が絡まって決まるもので、長らく「景気の指標」とされてきた。

しかし現在、日銀はこの長期金利を0%程度に誘導することを目標としており、今回「指し値オペ」を実施したことによって、ますます長期金利(国債の利回り)が、実態を表さなくなってしまった。もし日銀がこのまま長期金利を押さえ込む政策を継続しようとしても、いずれ限界を迎えるだろう。

もちろん、市場に現金を供給し、投資を活発化させたいという目的は、理解もでき、賛同もできるが、金融政策だけではどうにもならないところまで来ている。

トランプ氏の勝利が投資を活発化させている今、日本はこの活性化の流れに乗じて、実体経済の改善を目指すべきだ。そのためには、減税や規制緩和など民間の経済活動を活発化させる政策や、大規模かつ未来の産業につながる公共投資が求められている。(瑛)

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