前回の「手取り足取り経済講座」では「年金を維持するためには、増税はやむを得ないのでは?」という疑問について考えました。

答えは「No!」。

「そもそも消費税を上げても税収が増えない」

「仮に税収が少し増えたとしても、年金は2040年前後に底をつく」

という二重の理由からでした。

(参照:「年金問題」を知らずして消費税は語れない!? 【手取り足取り経済講座(13)】 http://the-liberty.com/article.php?item_id=12162 )

「年金破綻」は突拍子のない話ではない

少し補足しますと、後者の「年金破綻説」は、それほど突拍子もない話でもありません。

橋下徹・元大阪市長も以前、「(年金制度は)根本的に変えないといけない。ねずみ講そのものだ」「現役世代に対する完全犯罪。継ぎはぎの、ばんそうこうの手当てみたいなやり方では絶対に持たない」と発言しています。

「年金破綻説」を信じてもらえなければ、少しお名前を借りて、「橋下さんも言ってたけど……」と添えるのも、あり得るかもしれません。

「ばんそうこう手当て」よりも「根本治療」を

ちょうど今、橋下氏の言う「ばんそうこうの手当て」にあたる法案が、国会で審議されています。

ざっくり言うと、「不景気で人々の給料が減ったら、国に入る保険料も減るので、支給する年金も少し減らす」といった制度改革です(「マクロ経済スライド」の強化など)。

これに対して、民進党などは「年金カット法案」と批判しており、近いうちに衆院選があれば、主要な攻撃ポイントにする可能性もあります。

しかし現状は、多少のカットがやむを得ないどころか、多少のカットをしても、「年金破綻か、さもなくば、若い世代が保険料で身ぐるみはがされる未来」は避けられません。

では、いったいどうすればいいのでしょうか。

今、必要な根本治療とは、諸悪の根源である年金の「賦課(仕送り)方式」を止めて、「積立(貯金)方式」に移行することです。

つまり、若い世代に対して「あなた方の払った保険料は、引退世代に『仕送り』されずに、あなた方の将来のために積み立てられることになりました」ということです。

若い世代は「払った年金がちゃんと返ってくる」と歓迎するでしょう。

年金改革の最大の難所

しかし、ここで問題が出てきます。

現役世代の払った保険料が使えなくなると、政府の年金積立金も底をついてしまいます……。多くの国民にとっては、「じゃあ私たちが今まで払った年金はどうなるの?」となるわけです。

政府が「賦課方式」という"事業"を止めるにしても、そこに国民に対する多額の"負債"が残ってしまうわけです。

この"負債"の処理が、年金改革の最大の難所となります。

払い込んだ年金は「国債」で返す

弊誌「ザ・リバティ」が提案してきた処理の仕方は、3ポイントです。

(1) まず、年金支給がなければ生活できない方には、今までどおり年金を支給します。一般的な、生活保護のイメージです。これは主に、今まで保険料として集めてきた年金積立金の残りを使います。

(2) 老後資金があったり、養ってくれる家族がいる方には、今まで払ってきた年金を、現金ではなく、「国債」を発行して"お返し"ます。

この国債は、普通の国債のように「10年で返す」といった期限がない「永久国債」とします。「永久国債」にあたるものが発行された前例は、18世紀のイギリスや、江戸時代の薩摩藩、明治時代の日本にもあります。

「返済期限のない国債なんて誰がほしいのか!?」と思うかもしれませんが、少し利子をつけたり、「年金国債を持っていたら相続税が安くなる」といった条件をつければ、子孫に資産を残したい方や、一部の企業は欲しがるでしょう。

そのため、「年金国債」を現金に換えたい人は、そうした個人や企業などに売ることもできます。

(3) とはいっても、現金で払ったものが、現金でないもので返ってくるわけなので、一定の「怒り」を免れることはできないでしょう。

そのため、払った年金を事実上、消滅させてしまった政府・役所関係者を処罰して、罪を償ってもらいます。

年金改革は大変だが……いずれにせよ消費税は関係ない

以上が、弊誌が提案してきた「年金処理プラン」です。

詳しくは、2015年10月号記事の編集長コラム「『冷酷で非情な福祉国家」を続けますか? ――『愛と慈悲の国』への革命」をご覧ください。( http://the-liberty.com/article.php?item_id=10273 )

世論への説得も、実行も難しいものですが、日本の将来を考えても、正義・道徳的な観点で考えても、これが最も筋が通っているはずです。

……ということで、上の話を伝えるのは大変かもしれませんが、「年金をどうにかする策」というものは存在するわけです。

ただいずれにせよ、短期的には「消費税を上げても年金問題は何も解決しない」ということは言えます。

(馬場光太郎)

【関連記事】

2012年7月号 年金破綻で日本は甦る?

http://the-liberty.com/article.php?item_id=4357

2010年6月号 年金問題の根本解決

http://the-liberty.com/article.php?item_id=803