大学全入時代で経営危機 教育の原点は個人の熱意

大学全入時代で経営危機 教育の原点は個人の熱意

 

大学入学希望者数が入学定員総数を下回るという、大学全入時代。定員割れや退学率の上昇などで大学が経済難を迎えている。

 

朝日新聞と河合塾が行った共同調査「ひらく日本の大学」によれば、全国の大学を対象として「学生数の確保より入学者の学力の保証を重視する」「入学者の学力の保証より学生数の確保を重視する」のいずれか近い方を選んでもらった結果、「学生確保重視」と答えた大学が32%、「学力重視」は61%となったという(7日付朝日新聞)。3割以上の大学が、学生数の確保に苦心している現状が透けて見える結果だ。

 

実際に日本私立学校振興・共済事業団の調査によると、2016年度では四年制の私立大学の44.5%、短大に至っては66.9%もの学校が定員割れを起こしているという。また、いったん入学しても、退学する生徒も少なくない。文部科学省の調べによると、2012年の年間の大学中退率は2.65%で、2007年度の2.41%から上昇している。

 

この現状を打破するため、大学側は様々な取り組みを始めている。

 

その一つが、教員任せになりがちでチェックが働きにくい授業内容の向上だ。神奈川県の湘南工科大学では、教員養成の一環として、模擬授業について教員同士で意見を交換したり、講義形式の教員研修を始めている。

 

また、「授業に出席しない」学生への対策として、保護者が自分の子供の出欠状況や成績を確認することのできるサイトを開設した大学も出てきている。

 

激しい競争の中、各大学が生徒・保護者にとっての魅力を高めるため、授業内容やサービスを向上させる努力は確かに必要だ。

 

しかし、例えば大学生になって親に出欠状況を確認される状況が、本当に大学生の成長につながるのかについては、疑問が残る。学生が社会で活躍できる人材になる場として大学が機能するためには、別の視点が必要ではないだろうか。

 

 

理想の大学とは

制度をいじる前に、教育の前提としてどうしても必要なのは、一人ひとりの熱意である。

 

近年は、「就職したくないからとりあえず大学に入る」という学生も増えている。このような状況で、どうすれば、熱意ある学生を集めることができるのだろうか。考えるヒントになる一つの事例が、幕末に吉田松陰が教鞭を取った松下村塾だ。

 

松下村塾では、人間として、武士としてのあるべき姿を説く「士規七則」を掲げ、実学を身に着けるだけでなく、人間学や武士道が説かれた。松陰の気迫に弟子入りを懇願する青年は後を絶たず、建物の外にあふれるほど塾生が集まり、のちに総理大臣となる人物など、明治の社会に影響を与えた優秀な人材が数多く輩出された。

 

現代の大学に必要なのも、学生たちの心の中に眠る理想を目覚めさせ、向学心を引き出すような高い理想だろう。

 

2015年に千葉県長生村に開学したハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)は、現代の松下村塾を掲げている。HSUは、大学として認可を受けていない「私塾」だが、初年度から定員を超える学生が入学している。

 

その特徴は、教育・研究活動の根底に「他者への愛」や「人類への貢献」といった宗教思想があることだ。大学に入り、学ぶ意味や自分の人生の意味をも見いだせないことに悩む学生は少なくない。確かに、自分のためだけの努力はなかなか続かない。他者のため、社会のために自らの人生を捧げるという宗教心に基づく使命感があってこそ、苦難や困難を乗り越えることも可能になる。

 

教育制度を変えることによって、ある程度は、生徒を集め、退学率を下げることも可能だろう。しかし、それだけでは受け身の学生しか生まれない。根本的には、大学の側が、「学生に、そして社会に、どのような良き影響を与えられるか」という教育の原点に立ち戻ることが求められているだろう。(志/晴)

 

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2015年8月27日付本欄 明治維新の震源地・吉田松陰が大事にしていた「絆」と「救済の心」

http://the-liberty.com/article.php?item_id=10108

 

2015年9月号 大学生平均の2.5倍倍勉強する!? 「現代の松下村塾」 ハッピー・サイエンス・ユニバーシティに現役早慶生が"潜入"!

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タグ: 大学  教育  定員割れ  吉田松陰  松下村塾  ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ  HSU  私塾  

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