中国・北京の天安門広場には今も毛沢東の肖像が飾られる(robert paul van beets / Shutterstock.com)。
中国共産党の第18期中央委員会第6回全体会議が閉幕し、習近平国家主席が、別格の指導者である「核心」に位置付けられた。これまでの指導者のうち、核心に位置付けられたのは、毛沢東、トウ小平、江沢民の3氏のみ。集団指導体制を重んじた胡錦涛前国家主席は、核心に位置付けられていない。
習氏が進めてきた毛沢東路線がいっそう強まるとみられる。
毛沢東を想起させる習氏の動き
毛沢東が起こした文化大革命から、今年で50年が経つ。毛沢東は、農業・工業の大増産を目指す大躍進政策を実施したが失敗して失脚し、その後、党指導部が資本主義に走っているとして、文化大革命を起こした。毛沢東の紅衛兵は反革命分子とみなされた人物を虐殺していった。
大躍進政策では3000万人~5000万人もの餓死者が出たと言われており、文化大革命では数百万人~1000万人が犠牲になったと言われている(犠牲者数には諸説ある)。
毛沢東への個人崇拝が文化大革命につながったことの反省から、中国指導部は1980年、「若干の準則」を制定し、集団指導体制に基づいて意思決定を行うことを定めた。
だが習氏は、国家主席への就任後3年間、毛沢東の言葉を用いるなどして、毛沢東という強い指導者と自分自身を同一視させるような行動をとってきた。そして、国家運営も、毛沢東時代と同様、確固たる共産主義に基づいて行われ続けている。
実は危うい習近平体制
ただ、現体制に不満を抱いている人間も多く、軍事クーデターや習氏暗殺のうわさもささやかれる。
習氏は軍部を掌握するため、軍の要職に自身の子飼いを就けたり、軍区を強引に解体し、兵士30万人を削減。大物政治家が就任するのが一般的という北京市長に、さしたる実績も重要ポストの経験もない習氏の腹心が就任するとの情報も出ている(31日付産経新聞)。
また、中国の国内総生産(GDP)は世界第2位だが、そのデータは現実とかけ離れているとも言われる。中国経済の低迷も続いており、国家の補助金などで存続できている国有企業も多い。地方の工場の労働者や経営者たちは、不況のあおりを受けて軒並み失業し、政府への不満を募らせている。
習氏の国家主席の任期は、2023年まで。今後、「核心」として権力集中と個人崇拝を確立し、世界の覇権国家としての地位に王手をかけるのか。それとも、くすぶる不満を抑えきれなくなるか。はたまた、政権を揺るがすような国際環境の変化が起きるのか。今後も注視していく必要がある。
(山本泉)
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