7月の参院選で、幸福実現党の候補者の応援演説を行い、報酬を受け取ったとして、タレントの「テレンス・リー」こと加藤善照被告が公職選挙法違反(被買収)の罪に問われた事件の判決が31日、東京地裁で行われた。

中島真一郎裁判官は、検察側の懲役10月、追徴10万円の求刑に対し、懲役10月、執行猶予2年、追徴10万円を言い渡した。

判決によると、加藤被告は、参院選が公示された6月下旬、幸福実現党の東京選挙区の候補者の応援演説を行った見返りに、合わせて10万円を受け取ったという。各種メディアが報じた。

「"国策捜査"ではないか」と指摘するマスコミも

参院選では、幸福実現党は2009年の立党以来、過去最多の得票率を得ていた。当選者が1名しか出ない「1人区」のうち、同党の候補者が出馬しなければ、少なくとも4つの選挙区で自民党の候補が当選して単独過半数を確保できたのではないか、と各種メディアも指摘していた。

そうした背景があったためか、8月に警視庁が、公選法違反の疑いで東京都内にある幸福実現党本部を家宅捜索。これに対し、新聞各紙は「同法(編集部注・公選法)違反での政党本部の家宅捜索は異例」(8月3日付産経新聞)、「幸福実現党潰しに執念を燃やす安倍政権」「これは"国策捜査"ではないか」(8月18日付日刊ゲンダイ)などと報道した。

いずれも、安倍政権による幸福実現党への意趣返し、今後の各種選挙に対するけん制、という含みを持たせた内容だった。

「政治参加の自由」を制限する公選法は廃棄すべき

公選法自体にも大きな問題がある。メールでの投票依頼はアウトだが、LINE(ライン)やFacebook(フェイスブック)などの投票依頼はセーフといった具合に、選挙のプロでも間違えるほど細かいルールを定めている。

新しい政党や立候補者が、そう簡単には「新規参入」できないようにつくられたものと言え、事実上、「政治参加の自由」を制限している。

今回の事案は、お金で票を買うような悪意のある犯罪ではなく、応援演説をしてくれた人への「謝礼」であり、一般的な講演会などでは問題にならないケース。そもそも日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、ロシアのG8の中で、「選挙運動期間」に対する規制があるのは、ロシアと日本ぐらい(参考:2013年7月17日付ウェッジ・インフィニティ、※フランスは一部規制)。

ある弁護士は、今回の事案について「殺人や強盗のように実害がある犯罪とは性質がまったく違う。アメリカで、運動員に対する謝礼を違法とする法律があるとは聞いたことがない」と指摘する。

こうした微罪で新しい政党をつかまえようとする一方で、長年、補助金や給付金、許認可などを利用した"合法的買収"でお金を票に換えてきた自民党の"選挙運動"を問わないのであれば、決してフェアとは言えない。

公選法は、今後、「規制緩和」の対象として、廃止に向けた議論を進めるべきだろう。

今後の飛躍に期待

公選法は悪法という問題はあるものの、新しい政党が新しい世界で責任を果たそうとする時には、脇を固めて臨まなければいけないのも事実。

今回の事案は、同党にとって大きな試練となったが、今後、大きく飛躍することを期待したい。

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