パキスタン政府が、国内のテレビやラジオでのインド映画の放送を禁止すると発表した。米ニューヨークタイムズ紙が一面で報じた。

9月の国境付近での衝突を機に、印パ両国の緊張が高まっている。

印パ対立の根は深い

両国の対立は、インドがイギリスから独立した1947年にまで遡る。

独立の際、ヒンドゥー教徒の多い地域と、イスラム教徒が多い地域とで分かれて建国した。前者が現在のインド、後者が現在のパキスタンとなった。その際、宙に浮いたまま帰属が決まらず、両国が互いに一部を実効支配しているのが、国境付近のカシミール地方である。この地域の帰属をめぐって、両国間では3度紛争が起きている。

9月には、武装勢力がカシミールのインド軍基地を襲撃し、インド兵が計19人死亡した。これを「パキスタン側からのテロ行為」としたインド政府は、9月29日、特殊部隊をカシミール・パキスタン支配地域まで派遣し、武装勢力の拠点を攻撃。印パ両国の対立は深まっている。

この印パ関係の悪化を受けて、インドの大手映画グループは、パキスタン人俳優を起用した映画を上映しないという方針を発信。インド映画監督として著名なカラン・ジョハール氏も、今後パキスタン人俳優は起用しないと発表するなど、インド内でも「反パキスタン」のムードが高まっていた。

今回のパキスタン政府による「インド映画の上映禁止」という方針は、インド内での一連の動きに対する「報復」であるとパキスタン政府は述べている。

憎しみの連鎖を乗り越えるための「映画」を

映画というソフトは、「異文化理解」のためにも使えるが、「ヘイト感情」を高めることにも利用できる。しかし、本来人々を楽しませるエンターテインメントである映画が、対立を深めるものとして使われるのは、大変残念なことだ。

両国の対立の歴史は長く、中国の影響もあるため、一筋縄ではいかないが、両国が憎しみの連鎖を乗り越えることを願いたい。また、映画というツールが、国家間の対立を煽ることではなく、相互理解を促し、両国の関係改善に役立つことを祈りたい。(片)

【関連記事】

2016年9月20日付本欄 カシミールでインド兵17人が死亡 中国がうごめく印パ紛争に「光」はあるか

http://the-liberty.com/article.php?item_id=11939

2016年2月号 宗教対立を乗り越える日本の「調和の力」 - 「慈悲の力に目覚めるためには」 - 大川隆法総裁 法話・霊言ガイド

http://the-liberty.com/article.php?item_id=10662