10月の第二月曜はアメリカの祝日「コロンブス・デー」である。この日は国の祝日として定められ、今年10月10日も数多くのアメリカ人が大陸発見という偉業を祝った。

一方で「コロンブス・デー」を廃止する動きも出ている。

「コロンブスがアメリカ大陸を発見したと言うが、そもそもアメリカ大陸はコロンブス上陸以前から存在しており、原住民がそこで生活していたにもかかわらず、コロンブスが勝手に土地を略奪し、原住民を蹂躙した」と考える人々によるものだ。

アメリカ国内でのコロンブスに対する評価は二分される。

西廻り航路によってアメリカ大陸を"発見"し、文明をもたらした「英雄」とするものと、アメリカ大陸に厄災をもたらし、生涯自分はインドに上陸したのだと信じ続けた愚かな「虐殺者」とするものである。

10日付米ワシントン・ポスト紙は、「コロンブス・デーは今だに連邦祝日である。しかし、なぜ?」という題で、この論争に関して報じている。同紙は「コロンブス英雄像」への懐疑論を掲げ、同祝日の名称を「原住民の日」や「ネイティブ・アメリカン・デー」に変更している州や市の試みを紹介している。

7日付CBSニュースもフィラデルフィア州の公立学校で、コロンビア・デーが祝日ではなくなったと報じた。

アメリカ建国史への認識が、揺らぎをみせている。

歴史を「正しく」見るために

もちろん、コロンブスはヨーロッパ大陸に蔓延していた「白人優位主義」や「植民地主義」「略奪主義」の象徴にすぎず、ヨーロッパ全土の認識や方針に責任を負うものではない。しかし、近年の動きはアメリカの歴史認識を問う良い契機となり得る。

コロンブスをどう見るかという議論は、それまで当たり前に「入植者」側から見てきた歴史を、「原住民」側の視点から見直したことに始まる。勝者による歴史認識が「世界史」となるなかで、歴史を多面的に見ることの重要性は計り知れない。

先の大戦における日米戦に関しても同様のことが言える。一般的には「アメリカが日本の全体主義・侵略主義を降した」と言われているが、「欧米の白人優位主義・植民地主義に日本が対抗した」という見方もある。歴史を公正に見るためには、「勝者」の歴史認識から抜け出すことが必要だ。

「入植者史観」の是非を問うた本件が、その後の「戦勝国史観」を振り返るきっかけとなることを期待する。(片)

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