政府は、介護保険制度見直しの一環で、介護の必要性が低い高齢者向けの車いすなどの福祉用具レンタル料の支援を縮小することを検討している。

財務省も、4日の財政制度等審議会で、軽度の要介護者に対する掃除や洗濯などの在宅の生活援助サービスの自己負担を増やすなどの改革案を提示した。

この提案に対し、野党側は「利用が控えられて高齢者の身体状態が悪化し、介護費の増大や家族の負担増につながる」と指摘。民進党の初鹿明博氏は、「カットした場合、家族が(介護を)やらざるを得ない」として、介護サービスの縮小は安倍政権が掲げる「介護離職ゼロ」の流れに逆行していると批判した(5日付東京新聞)。

介護サービスに頼りすぎることの危険

では、介護サービスは、手厚ければ手厚いほど高齢者のためになるのか。

介護問題に詳しい首都大学東京大学院の星旦二名誉教授は、このほど発刊された本誌11月号のインタビューでこう語っている。

「医療や介護を充実させ、高齢者を手厚くサポートすることは、かならずしも『健康長寿』にはつながらないのです。(中略) 階段や段差など、生活の中に適度な『バリア』があることが足腰の機能を保ってくれて、寝たきりにならずに済むのです」(本誌11月号記事「幸せな介護のすすめ」より)

高齢者の自立を支援するためには、高齢者に「自分でできることは自分でやる」という姿勢を失わせないことが大切だ。本格的な介護が必要ない段階から、介護保険サービスに頼りすぎることは、まだ残っている生活機能を、わざわざ失わせることにもなりかねない。生活機能を失うと、要介護度が上がり、寝たきりに近づくので、本人も家族も幸せな老後から遠ざかってしまう。

介護費の増加を放置してはいけない

介護にかかっている、国の財政の問題も深刻だ。

介護保険で使われる総費用は、サービスが導入された2000年は3.6兆円だったが、2015年は約3倍の10.1兆円に拡大。約10年後の2025年には、21兆円にまで膨らむと予測されている。

現在の介護保険制度は、高齢者の要介護レベルが上がれば上がるほど、保険で利用できる介護サービスの限度額も上がる。こうした制度では、さらなる介護費の増加は避けられない。政府は、高齢者の自助努力をサポートする方向で、制度を設計し直す必要があるのではないか。

「家族の絆が深くなっていく」

介護は、縁ある人の最期の世話をすることで、それまで受けた恩を返す貴重な機会にもなる。もちろん、「介護離職」の問題は解決していかなければならないが、介護を施設任せにして、家族や親戚がまったく面倒を見なくなることは望ましくない。

大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『奇跡の法』で、介護について次のように述べている。

国や都道府県が面倒を見ることができないというのは、一見、非常に不幸なことのようにも見えますが、逆に、それぞれの家族のなかに自衛手段が働いてくるため、家族のきずなというものが深くなっていくだろうと思うのです。すなわち、子供が親を養わなければいけないような時代が、もう一度、到来するのです

超高齢化社会を迎えている今、すべて政府に老後の面倒を見てもらおうとするのではなく、家族で助け合う文化を復活させることも必要だ。

(小林真由美)

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