これまでに395兆円が投じられてきた経済対策。

政府は25日に、来月2日にもまとめる経済対策を20兆円規模にすることを決め、景気刺激策を打ち出す方針を固めた。安倍晋三首相は、デフレからの完全脱却と銘打ち、「総合的かつ大胆な経済対策」により、アベノミクスを前進させると明言している。

これまでにも幾度も実行されてきた経済対策。だが、その成果が十分にあったのか否かが検証されず、対策ありきで進められている感がある。

経済対策25回、うち17回は自民

バブル崩壊以降、実施された経済対策は、これまでに25回に上り、総額395兆円を投じて景気浮揚を図ってきた(下表)。うち、自民党は17回の対策を講じている。

しかし、上図を見れば明らかなように、その後の名目GDPは、たったの37兆円しか伸びていない。経済対策が、予測通りの成果があったのか振り返る必要があるのではないか。

もちろん、本欄では、公共事業などに税金を投じる「財政出動」の有効性を否定するつもりはない。世界情勢の影響で、景気が冷え込んでいるのを見過ごしていいはずがない。強調したいのは、経済対策に見合った成果があったのかということだ。

経済学では、財政出動による経済効果を「乗数効果」と呼ぶ。投資額に対して、全体としてどれぐらいの経済効果があったのかということだ。

この効果を大きくするには、投じたお金のうち、どれだけ消費に回ったのかという「消費性向」を高くする必要がある。お金を投じても、貯蓄に回ってしまえば、十分な効果が上げられないためだ。この「消費性向」が高ければ高いほど、経済効果は大きくなり、景気が良くなる。

だが、例えば麻生政権が2009年に行った、国民1人当たり1万2千円を配った「定額給付金」(65歳以上と18歳以下は2万円)では、貯蓄に回す世帯が多く、十分な結果を生むことはできなかったと言われている。

増税→不況→景気対策→増税の連鎖も

さらに、せっかく経済対策を行っても、その成長を阻害している大きな原因となっているのが、消費増税だ。

自民党政権は、増税を実行する前後に、経済対策を打ち、増税の悪影響を緩和させようとした。だが、自ら不況に突き落としておいて、その対策を講じるやり方には、ちぐはぐさが目立つ。今回打ち出された財政出動も、消費増税の悪影響が尾を引いている面は否めない。

つまり、「政府が増税した結果、不況になり、その対策として財政出動を行う。その経済対策で景気が上向いてきた時に、さらなる増税をする」というサイクルが繰り返されているわけだ。

これでは、GDPが十分に伸びることはなく、増税の冷や水を浴びせ続けられることになる。安倍政権は、そうした「増税サイクル」から抜け出し、減税からの経済成長を目指すべきだ。

(山本慧)

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