企業の資金が、預金へと流れている。22日付日本経済新聞が報じた。

記事によると、法人の預金は4月末に225兆円になり、前年同月比で11%も増加。5月末も220兆円と前年同月比で7%上回った。日銀のマイナス金利政策の影響を受け、資金を国債で運用することが難しくなり、預金に回すようになったという。

特に、自動車業界の預金が大幅に増えている。1年間で10.7兆円と3割も増加。トヨタの預金は、2014年度末は2.4兆円だったが、今年3月末は3.9兆円に増えた。

あるメガバンクの幹部は、「企業は先行きに不安を抱えており、金融緩和をしても成長投資に資金を振り分けていない」とコメントしている。

トヨタですら投資をしたがらない

財政基盤が強固なトヨタですら、未来への投資をしたがらないのだから、他の企業は言うまでもないだろう。

大事なのは、経済の見通しが明るくなるか否かだ。企業も個人も、未来に希望を持つことができれば、投資や消費を活発に行い、自然にお金が回り始める。逆に、いくらお金があっても未来が不安だらけであれば、みなお金を使わず、経済は低迷する。

今、日銀や政府がやるべきことは、明るい未来を見せ、企業や国民がお金を借りてでも何かに投資したくなるような状況をつくることだろう。

世の中でお金が回る速度を速める

では、「お金を借りてでも投資したくなるような政策」とは、どんなものか。

まず為すべきは、日本経済の足かせとなっている消費税を5%へと引き下げることだ。消費税は、商品が流通する過程で何度も税金がかかるため、お金の流れを阻む「ハードル」となる。消費税率を下げることで、世の中でお金が回る速度が速くなる。

航空・宇宙産業や防衛産業、ロボット産業、新エネルギー開発などの未来産業への投資も必要だ。

現在の日本は、技術はあるのに資金不足で有人飛行が実現できない状況にある。ならば、未来事業債のような形で民間や外国の資金を集め、将来性のある分野に200兆円くらいを投資すれば、有人飛行も実現する。さまざまな技術開発が進み、スピンオフ製品も登場するだろう。

GDP3倍も夢ではない

また、リニア新幹線や航空交通網などの交通インフラ整備も大切だ。これまで新幹線が開通した地域では、所得が増えてきた。

例えば、2015年、北陸新幹線が開通し、石川県では1世帯当たりの年間所得が2.8万円増加。富山県でも、2.2万円増えた。2011年には博多~鹿児島間の新幹線が全線開通し、九州全体の1世帯当たりの年間所得は4.7万円増えている。

その他にも、東京などに高層都市開発特区を設け、1000メートル級の多機能ビルを建てたり、ビルの間をモノレールでつなぐなど、アイデア次第で新たな都市づくりもできるはずだ。

こうしたことを実現すれば、GDPが3倍に跳ね上がることも、夢ではない。考えるだけで、わくわくしてこないだろうか。

「未来は明るい。日本の繁栄は絶対に揺るがない」と断言し、実際に未来ビジョンを見せることが、政治家の仕事。日銀はマイナス金利政策を、政府は消費増税政策を廃し、成長が期待される分野に、投資していくべきだ。

(山本泉)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『未来へのイノベーション』 大川隆法著

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