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バングラデッシュの首都ダッカにある飲食店で、武装集団が人質を取って立てこもるテロ事件が発生し、人質20人が死亡した。今のところ真偽は不明だが、「イスラム国」系メディアが犯行声明を出している。

テロで犠牲となった日本人7人は現地でJICAの円借款のインフラ事業に参加していた。心からご冥福を祈りたい。

装備の不足が救出のネック?

今回の事件のみならず、日本人が海外でのテロや武装組織による襲撃に巻き込まれることが増えている。

その中には、当該国の同意が得られれば自衛隊の特殊部隊を派遣すべきケースもあるだろう。

本年3月に施行された新たな安全保障関連法により、在外邦人の警護・救出を目的とする武器使用が認められた。ただし、正当防衛や緊急避難の範囲に限られており、いくら相手が人質を取って立てこもっているテロリストや武装勢力であっても、危害を加える形での武器使用はできない。実際には、まだまだ自衛隊は手足を縛られている。

法整備のみならず装備の充実も重要だ。ジャーナリストの丸谷元人氏は、海外で日本人がテロに巻き込まれ、特殊部隊が救いに行こうとした場合、装備がネックになると指摘する。たとえば、2013年にはアルジェリアテロが起こったが、今の自衛隊には、現場まで救出部隊や救出に必要なヘリなどを一気に空輸できるだけの輸送機がないという。(2016年3月31日WEB Voiceより)

もちろん、現地の詳細な情報を収集できるだけの体制づくりが前提だ。

装備の充実や情報収集体制の確立には、いずれも予算が必要となる。

浮世離れした共産党議員の発言

こうした国際社会の現状を見るならば、共産党政策委員長だった藤野保史氏が、テレビの討論番組で「防衛費は『人を殺すための予算』」と発言したことが、いかに"浮世離れ"しているかは明らかだ。

藤野氏は、今年度の防衛予算が5兆円を超えたことを指摘し、「人を殺すための予算でなく、人を支えて育てる予算を優先させていくべきだ」と発言。批判を受けて政策委員長は辞任したが、これは共産党のホンネが漏れただけかもしれない。

共産党をはじめ、民進党や社民党など左派政党は、集団的自衛権の行使容認を定めた安保関連法を「戦争法」と呼んだ。そして、「日本が戦えるようになれば、子どもたちが戦場に送られる」と主張してきた。

しかし、安保関連法が成立した背景には、日本が好むと好まざるとに関わらず、軍事的脅威が迫っていることがある。さらには、世界各国で起こっているテロ事件はもはや戦争と呼んでもおかしくなく、日本も「他人事」として済ませるわけにはいかない。

防衛費は国民を守るための予算

しかし、日本の政治家は国民を守るための安全保障体制づくりに正面から向き合っている様子は見えない。国防の議論は票につながらないと考えてか、あるいは"平和ボケ"しているのか、参院選においても国防に触れている政党はほとんどない。

悪意を持った独裁国家が軍事力を用いれば、他国を侵略し、「人を殺す」ことになるだろう。しかし本来、軍事力を維持するのは、侵略の意図を持つ攻撃から、自国や友好国の「人を救う」ためである。防衛費は「国民を守るための予算」だと考える国際常識が日本にも根付かなくてはならない。(慈/佳)

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