アメリカ南部のフロリダ州オーランドで12日、同性愛者向けナイトクラブで男が銃を乱射し、死者50人、負傷者53人を出した。アメリカの銃乱射事件として史上最悪の被害となり、テロ事件としては9.11以降で最悪のものとなった。

男は警官と銃撃を交わし、一度クラブ内に戻って人質をとって立てこもったが、警官隊が突入し、人質約30人を救出。容疑者は射殺された。男は店内から警察に自ら通報しており、その際、「イスラム国」への忠誠を誓っていたという。

オバマ大統領は同日、緊急声明を発表。「テロ行為であり憎悪による行動だ」と非難するとともに、「性的少数者(LGBT)にとって胸が張り裂けそうな日だ」「(犯罪者が)武器を手にすることがいかに簡単か改めて思い知らされた」と、事件の背景にあるアメリカの社会問題について指摘した(13日付日本経済新聞Web版)。

またしても民間人を標的としたテロ事件が起きた。亡くなった方々のご冥福をお祈りするとともに、その家族やケガをした方々の心身の傷が一日も早く癒えることを願いたい。

アメリカが抱える3つの問題

今回の事件は、現在アメリカが抱えている社会問題をいくつも浮き彫りにしている。それは、(1)イスラム過激派によるテロの脅威、(2)同性愛者などの是非をめぐる問題、(3)銃規制問題の3つだ。

(1)イスラム過激派によるテロの脅威

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件、2015年1月のフランス・パリでのシャルリー・エブド襲撃事件、同年11月のパリ同時多発テロ事件など、近年、イスラム過激派が欧米でテロを起こすケースが増えてきている。加えて、イラクとシリアの国境で勢力を拡大した「イスラム国」は、アメリカ本土への攻撃を予告している。

今回の事件についても、「イスラム国」は犯行声明を出した。米当局は事件とイスラム国を直接結び付ける証拠はないとしているが、容疑者が電話でイスラム国に忠誠を誓っていたことから、米国内で警戒感が強まることは必至だろう。

(2)同性愛者などの是非をめぐる問題

アメリカでは、同性婚が認められている州と禁止されている州があったが、昨年6月、禁止されている州のカップルが起こした訴訟に対し、米連邦最高裁判所は、全州で同性婚を認めるとの判決を下した。

しかし、キリスト教の教義などを重視する保守層に反対する声は根強い。もちろんイスラム教でも同性愛はご法度で、イスラム教国の中には死刑になる国もある。

同性愛者など性的マイノリティに対する偏見や迫害は、すぐには解決しそうにない。

(3)銃規制問題

オバマ大統領は今年1月、涙ながらに銃規制の強化を訴え、大統領令によって銃を購入する人の身元調査の強化をすることなどを発表した。大統領令は議会承認を必要としない。

オバマ大統領の民主党は銃規制を強化しようとしているが、自由を重んじる共和党は銃規制に強く反対しており、法制化は見送られてきた。

銃を持つ自由か、銃の危険の排除か。これも結論はすぐ出そうにない。

今回の事件については捜査が始まったばかりで、動機などまだはっきりしない点も多いが、アメリカが抱える問題の多さと深刻さがわかる。正義はどこにあるのか。今もっともそれを求めているのはアメリカかもしれない。(紘)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『イエス・キリストに聞く「同性婚問題」』 大川隆法著

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