スイスで、すべての国民に毎月一定の額が無条件で支給される「最低生活保障(ベーシック・インカム)」の導入について、国民投票が行われた。反対が76.9%、賛成が23.1%となり、反対多数で否決された。7日付各紙が報じた。

可決されれば、成人一人あたり2500スイスフラン(約27万円)、未成年は625スイスフラン(約6万8000円)が支給される見通しだったという。

スイスでは、有権者10万人の署名があれば、国民投票を行うことができる。今回の投票も国民からの発議で行われた。

国からお金をもらうと、「働く意欲がなくなる」「経済の競争力が落ちる」

今回の投票にあたって、推進派は、失業手当や年金などの代わりに最低生活保障を導入することで、社会保障制度が簡素化されるため、行政コストが抑えられたり、貧困の解消につながったりするなどと主張していた。

一方、反対派は、勤労意欲がなくなって働かなくなる人が増えることや、国民の負担が増えることで国際的な経済の競争力が落ちるなどと指摘していた。

スイスは、お金持ちの国で、昨年の平均賃金は、月額6000スイスフラン(65万4000円)以上と、高い水準となっている。就業率も高く、経済も発展している。

「国が国民の面倒を見る」のは、恐ろしいこと!?

今回、「No」を示したスイスの有権者の判断は、妥当なものと言えるだろう。「国が国民の面倒を見る」ことは、一見、とても優しく、素晴らしいように見えるが、実は、怖い。

旧ソ連では、食糧や生活用品、衣料などあらゆるモノを、どれだけつくるかということを、官僚が決め、それを国民に配る計画経済を行った。しかし、国民が何を必要とし、何が足りているかを、すべて、官僚が把握できるはずがない。

実際に、旧ソ連では、食糧不足が続き、パン一斤手に入れるために、長い行列をつくらなくてはならなかった。そして、こうした状況に不満を言ったり、政府に反抗したりした人々は、次々と消されていった。

国民が豊かになるためには、「自助努力」と「小さな政府」が必要

「国が国民の面倒を見る」というのは、経済がうまくいっているうちはいいが、うまくいかなくなったときに、為政者や官僚など権力を持つ人々が、自分たちの誤りを認めるのでなく、国民を虐げたり、粛清したりする恐さがある。

私有財産を奪われていたら、国民は抵抗することも、海外などに逃げることもできない。

結局、計画経済の旧ソ連で実現したのは、「貧しさの平等」であり、最終的に国そのものが崩壊した。やはり、豊かになることを目指すには、国民一人ひとりが自助努力の精神を持ち、「小さな政府」をつくらなくてはならない。(志)

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