ここ数カ月、注目され続けてきた増税の行方――。

安倍晋三首相は、1日の夕方、来年4月に予定していた消費税率10%への引き上げについて、2年半延期する方針を発表した。

会見で、安倍首相は、その理由について「内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきだ」と話した。

再延期に対するマスコミの反応

この判断について、2日付の大手各紙は社説などで、以下のように触れた。

  • 読売新聞:「安倍首相には、増税延期による施策への影響や代替財源の確保策を示す責務もある」

  • 朝日新聞:「財政再建と社会保障財源充実のために、消費増税を予定通り実施するのが筋だ」

  • 日経新聞:「財政再建の見通しはどう立てるのか。膨らむ社会保障費の財源をどう手当てするのか」

  • 毎日新聞:「増税の再延期で日本経済の足腰が強くなる保証もない」

  • 産経新聞:「増税再延期に伴い、予定していた社会保障の充実や財政健全化への影響も避けられないだろう」

消費税率を70%まで引き上げる覚悟はあるのか

大手紙のスタンスはさまざまだが、共通しているのは、「膨れ上がる社会保障費を賄うためにも、増税は必要」という認識だ。しかし、本気で、消費増税で社会保障費を賄うつもりなら、税率は10%でおさまるはずがない。

日本銀行の最高意思決定機関である「政策委員会」の審議委員を務める原田泰・元早稲田大学教授は、以前、消費増税で社会保障費をすべて賄おうとすれば、2060年までに税率を70%まで引き上げる必要がある、という試算を出している。

新聞に軽減税率を適用させて、「増税は必要」はアリ?

そもそも、マイナス金利にしても、企業がお金を借りない時代に、増税などしたら、国民の財布の紐はますます固くなり、誰もお金を使わなくなってしまう。

いま、本当に必要な政策は、「減税」による景気回復だ。つまり、消費増税は延期ではなく、中止すべきであり、税率は5%へと引き下げるべきだ。

ちなみに、新聞各紙は、「消費税率を10%に上げろ」と主張する一方で、新聞協会をあげて、軽減税率の対象品目に「新聞の定期購読料」を入れるよう、安倍政権に働きかけ、ちゃっかり実現させたという事実もある。

自分たちの商品は、増税の対象から外させておいて、「でも、他の商品やサービスは増税しろ」と主張しているわけだ。

新聞は、増税という判断を間違えている上に、その主張の背景に、国民にあまり知られたくない事実を抱えている。新聞が「正義の味方」でないのなら、国民はメディアが伝える情報の真偽を見抜く読解力「メディア・リテラシー」を磨くしかない。(増/格)

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(第1章:「正義の法」講義 4:マスコミも政治家も正々堂々の議論を)

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