レスター・シティのジェイミー・ヴァーディ選手。(mooinblack / Shutterstock.com)

ラグビー日本代表が2015年9月、イングランドの地で、南アフリカ代表から大金星を上げたことは記憶に新しい。同じ地で、今度はサッカー史に残る快挙が成し遂げられた。

2日(現地時間)に行われたサッカーのイングランド・プレミアリーグ(1部)、チェルシー対トッテナム戦が2対2の引き分けに終わった。この結果、2試合を残して、日本代表の岡崎慎司選手が所属するレスター・シティの優勝が決まった。実にチーム創設132年で初の栄冠だ。

ここ20年を見ると、優勝しているのは、マンチェスター・ユナイティド、チェルシー、アーセナルといった、ビッグクラブ。豊富な資金力を武器に、各国の代表クラスの選手を擁し、優勝争いを繰り広げてきた。

一方、昨シーズンのレスターは、2部から昇格してきたばかりで、リーグ終盤まで最下位。優勝争いどころか、残留争いをする有り様だった。

選手の大半も今シーズンが始まるまでは、全くの無名選手。選手の総年俸も、全20チーム中17位。リーグトップのチェルシーの2割程度にすぎない。

無名選手が一気にブレイク

ただ、今シーズンの彼らは一味違った。

昨シーズンの残留に大きく貢献した、イングランド代表にも名を連ねるストライカー、ジェイミー・ヴァーディは、ここまで22得点で得点ランキング3位につける。リーグ新記録となる11試合連続ゴールを達成するなど、チームの攻撃の要となっている。

その他、技巧派ドリブラーのリヤド・マフレズ、タックルを武器に攻撃の芽を摘み取るエンゴロ・カンテなど、シーズン開幕前の期待値以上の活躍を見せる選手は多い。

8部から1部へ上りつめたストライカー

今シーズンブレイクしたレスターの選手の中でも、特に、ヴァーディは遅咲きの苦労人だ。

背が低いという理由から、地元の名門クラブであるシェフィールド・ウェンズデー(現2部)の下部組織をクビになった。当時の年齢は16歳。夢半ばで、プロへの道を閉ざされた失意は計り知れない。

その後2007年から、8部や7部のアマチュアクラブに入団する。当時の週給はわずか30ポンド(約4800円)。サッカーだけで暮らしていくには到底足りない。昼間は医療機器の工場で働き、夜はグラウンドに通う日々だったという。

日の目を見ない中でも、実績を積み上げると、2011年、大きな転機が訪れる。

5部のフリートウッド・タウンに引き抜かれ、リーグ戦36試合で31得点を記録する。この実績がスカウトの目にとまり、当時2部に所属していたレスターへと移籍。計9年間にわたるセミプロ生活に別れを告げ、ついに初のプロリーグへ足を踏み入れた。

そして、チームの一部昇格、プレミア制覇――。この類まれなサッカー人生は、映画化も検討されており、自身もビッククラブへのさらなるステップアップが噂されている。

不得意なことは無理強いしない

選手だけではない。彼らの才能を見抜き、獲得したスカウト陣、強みを生かしたクラウディオ・ラニエリ監督の采配も光る。

足は速くなく、パスも苦手だが、競り合いだけは負けない。当たり負けするが、卓越したボールコントロールができる――。レスターの選手たちは、それぞれ弱点と武器とを合わせ持っている。ラニエリ監督は、選手の弱点を修正する代わりに、「90分間走り続ける」など、シンプルなメッセージを発信し続けた。

その結果、彼らは自分の武器を生かして戦うことができ、カウンターを主体とするサッカースタイルが確立された。

挫折を経験した選手たちの諦めない気持ち、資金面、人材面での壁を乗り越えた、クラブや指導者の巧みなマネジメントが合わさって勝ち取った優勝と言える。レスターには、強い組織づくりのヒントがありそうだ。

来シーズンは、ヨーロッパのクラブNo.1を決める、チャンピオンズリーグへの出場が決まっているレスター。サクセスストーリーはどこまで続くのだろうか。

(冨野勝寛)

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