自民党は8日、「同一労働同一賃金」の実現に向け、政府に提出する中間提言案を明らかにした。

提言案には、正規・非正規を同じ賃金にするためのガイドラインの作成や法整備、最低賃金を全国平均で時給1000円に引き上げることなどが盛り込まれた。

最終的な目標は、「非正規社員の賃金を、正規社員の7~9割に引き上げること」。これはヨーロッパ並みの水準だ。現在の日本では、非正規社員の賃金は正社員の5割強となっている。

公明党も、同一労働同一賃金のための提言をまとめる方針を示している。こうした提言をもとに、政府は5月末、「ニッポン1億総活躍プラン」に明記する見通しだ。

同一労働同一賃金で日本経済は低迷する

たしかに、非正規社員を中心に待遇の改善への期待の声もある。だが、実際に「同一労働同一賃金」が実現すれば、雇用は減り、日本経済は低迷してしまうだろう。

というのは、正社員の賃金は引き下げないことを前提にしているため、企業の人件費は増える。企業の側が人件費を増やせない状況であれば、雇用する人数を減らすしかない。また、投資に使えるお金も減るため、設備の整備や研究開発が進まない。

新たな事業を始めたり、新商品を開発しづらくなれば、自由競争の中で勝ち残れない企業も出るだろう。そうなれば、雇用そのものを失うことになる。

善意に燃えた人々が全体主義への道を準備した

政府が企業の経営に口を出すことは、「全体主義への道」でもある。経済学者のフリードリヒ・ハイエクは、著書『隷属への道』で、経済的な統制や計画化が、果ては独裁や全体主義に行き着く危険性を指摘している。序文にはこんな言葉がある。

「起こりうる最大の悲劇とは、ドイツの例をとれば、善意に燃えた人々、民主主義国でも尊敬され、お手本とされた人たちこそが、実際に創り出したわけではないにせよ、全体主義への道を準備し、推し進める諸要因を生みだす基礎を作った、ということである」(『隷属への道』より)

同一労働同一賃金の提言は、非正規雇用の人々が不公平感を感じないようにという善意からのものかもしれない。たとえそうであっても、全体主義を生み出してしまうことがあるということだ。

もちろんこの提言だけで全体主義になるわけではないが、企業の経済活動に制限をかけたり命令することは、そこへつながる道のひとつだ。

「格差は悪」という考えに基づく方法とは別の道を考えていくべきだ。ビジネスで成功する人が出ることで、景気も良くなり、新たな雇用も生まれる。成功者を祝福し、景気自体をよくしていこうとする姿勢が、政府にも民間にも必要なのではないか。

(山本泉)

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