2016年5月号記事

衆院京都3区 補欠選挙

国難の時代に「事」を成すのは誰か

4月、衆院京都3区で補欠選挙が行われる。

同区は、志士たちの強烈な国防意識の高まりから始まった、

明治維新ゆかりの地だ。

(編集部 山下格史)

「生死などは取りたてて考えるほどのものではない。何をするかということだけだと思っている。世に生を得るは事を成すにあり、と自分は考えている」

歴史小説家の司馬遼太郎は、名著『竜馬がゆく』の中で、維新の立役者である坂本龍馬にそう語らせた。

1866(慶応2)年、幕府を倒すために奔走し、犬猿の仲だった薩摩と長州に手を結ばせ、薩長同盟を成立させた2日後の3月9日。京都伏見の旅籠「寺田屋」(写真)でそう語った直後、龍馬は幕府の役人に襲われた。

幕末、全国で志士が立ち上がり、倒幕運動が加速した背景には、「このままでは、日本が欧米列強の植民地にされる」という強烈な国防意識があった。

現代、日本を取り巻く国際情勢は緊迫している。北朝鮮が「水爆実験」やミサイル発射を繰り返し、中国が南シナ海の島にミサイルや戦闘機を配備。幕末と同じ「国難」を迎えている。

補選に複数の候補が名乗り

龍馬が九死に一生を得た寺田屋事件から、ちょうど150年後の2016年4月、伏見を中心とした衆院京都3区(注1)では、補欠選挙が行われる。

自民党・宮崎謙介氏が女性問題で辞職したためだが、幕末の文脈で言えば、責められるべきはスキャンダルそのものより、国民に役立つ「事」を何一つ成していない情けなさ、だろう。

立候補を表明しているのは、民主党の泉健太氏(比例復活で現職)のほか、いずれも新人の、おおさか維新の会の森夏枝氏、日本のこころを大切にする党の小野由紀子氏、無所属の郡昭浩氏と田淵正文氏。自民党と共産党は、公認候補を出さない見通し(3月17日時点)。

そんな中、新たに名乗りを上げたのが、幸福実現党の公認候補・大八木光子氏(31歳)だ。

(注1)京都市伏見区、向日市、長岡京市、大山崎町。

京都の心を世界に広めたい

京都で生まれ育った大八木氏は、短大で観光学を学ぶうちに、「自分の目で、世界を見て回りたい」と単身、日本を飛び出し、オーストラリアやカナダに移り住んだ。現地で語学学校に通い、飛び込みで面接を受けて地元の農場やレストランで働いた。人懐っこく、肝が据わっているのはそのためだろう。

京都にあだたぬ(注2)大八木氏は、3年半の海外生活で多くの気づきを得た。他人を素直に祝福する心。同時に、機微を感じ取りながら人に接する「和の心」「おもてなしの心」は、世界にもっと必要だと感じた。

帰国後、祖父が経営していた日本料理屋で若女将として経営に携わった。その時期に、ちょうど消費税率が5%から8%に上がった。

開業以来、値上げせずにがんばってきた店が、とうとう値上げに踏み切った。パンフレットなど、あらゆる印刷物の表示を変えた。重い負担に耐えられず、伝統ある会社や仕入れ先が次々と店を閉めていった。

「日本の豊かな伝統や文化を守り、次世代につないでいくためにも、景気の悪化は食い止められないものか」

くやしかった。

転機が訪れたのは昨年8月。

60年続くハワイの和菓子店にマネージャーとして勤務することが決まり、ビザなどの手続きを進めていた矢先のこと。幸福実現党から、「夏の参院選に出馬しないか」と声がかかった。

迷った。

自然豊かなハワイは学生時代から憧れていた土地。そこで着物を着て抹茶を点てながら、観光客をもてなす。理想的な生き方だった。

だが、すぐに気づいた。

「京都の心、日本の心を世界に広めたい」という思いは、政治の世界でこそ実現できる。

その後、急きょ、補選となり、「時期が少し早まるだけ。飛び込もう!」と出馬を決めた。

(注2)「収まりきらない」という土佐弁。 龍馬が脱藩した際、同志の武市半平太が「土佐にあだたぬ男」と評した。

「おもてなしの心」を

北朝鮮・中国の軍事拡張で、緊張が高まるアジア情勢。

大八木氏は語る。

「愛する京都、日本の伝統・文化を守り抜くためにも、核装備を含めた防衛力の強化は必要。『今そこにある危機』から目をそらしてはいけない。愛してるから、黙ってられへん。いまこそ、裏表のない、おもてなしの心、まっすぐな、正直な心を、日本の政治に取り戻したい」

日本の独立を守った明治維新は、強い国防意識から始まった。現代に維新の志士が生きていたら、何を考え、何を言い、どう行動するだろう。

「事」を成すのは誰か。

京都補選は、未来の日本の礎を築く一里塚と言える。

3月17日、京都府庁の会見で、出馬の決意を語る大八木氏。

大八木氏の主な3つの政策

1 観光立国「Japan」の実現

2 消費税率を5%に引き下げる

3 核装備の検討を含めた防衛力の強化を図る

幸福実現党 京都府第3区 支部長

大八木 光子

(おおやぎ・みつこ)

1984年、京都市生まれ。乙訓高校を卒業。大阪成蹊短大観光学科に入学後、オーストラリア、カナダで農業・サービス業に従事。帰国後、日本料理屋の若女将を務める。元・北大阪商工会議所青年部理事。特技は、スノーボード、スキューバーダイビング。

京都3区内にある長岡京駅前で、地元有権者にあいさつをする大八木氏。