大分県別府市と中津市が、パチンコなどに興じた生活保護受給者に対し、支給を一時停止していたことをめぐり、厚生労働省は、「支給停止には法的根拠がない」として、対応の是正を求めた。これを受け、両市は16日、来年度から支給を行う方針を決めた。産経新聞(17日付)が報じた。

記事によると、別府市では長らく、市職員が年1回、パチンコや市営競輪場を巡回し、生活保護者を見つけ次第、施設に立ち入らないよう指導。これに従わなければ、支給を停止する措置をとってきた。だが厚労省が、「生活保護法にはパチンコなどへの支出を禁じる文言がなく、支給停止は不適切」との見解を示したため、同市は今後、施設に立ち入ることを控えるよう指導に改めるという。

ギャンブルは「健康で文化的な最低限度の生活」?

生活保護の制度は、憲法第25条に基づいて存在している。条文にはこうある。

「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」

この条文をもとに、長年、「生活保護者の基準はどうあるべきか」が議論されている。しかしその基準が、しばしば「庶民並み」にすり替えられがちだ。人間は衣食住が足りていれば十分に生きることができ、ギャンブルに行くのはもっての外と考えるのも無理はない。

「第60条に反する」と解釈すればいい

また、厚労省は、「生活保護法には、パチンコへの支出を禁じる文言がない」との立場をとっている。だが、「受給者ができること、できないこと」をすべて盛り込むことは現実的なのか。同法第60条には、すでに生活保護受給者の「義務」として、「能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図るように努めなければならない」と明記されている。質素倹約に努める人が、ギャンブルに行くはずがないと解釈もできる。

NPOとの協力も必要

ギャンブル依存症によって、生活保護になる人もいる。行政側が、常習者に対して指導し、それに従わないのであれば、支給停止になってもやむを得ない。生活保護の一部を現物支給に変えたり、NPOなどとも協力して、依存症から脱却するためのケアを図るなど、生活保護のあり方を考えなければならない。

生活保護は、あくまでも一時的な措置であり、「自立」が前提だ。自らの力で生きることは喜びであり、その途中で社会に助けられたのなら、「恩返し」をすることも大事な生き方であるという考え方を広める必要もあるだろう。

(山本慧)

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