デズモンド・ブラウン元イギリス国防相がこのほど、ハッキングによってイギリスの核兵器システムが無力化される可能性を、英BBCで指摘した。

イギリスが持つ核兵器システムは「トライデント」と呼ばれている。4隻の核搭載型潜水艦から成り、少なくとも1隻が常に海洋をパトロールしている。イギリス本土が核攻撃に遭った後でも反撃できる態勢を取っている。

サイバー攻撃で兵器を無力化

「トライデント」システムで使用されている潜水艦は、2020年代に耐用年数を迎える。そのため、イギリスは今からシステムのアップグレードに取りかかっている。

しかし、ブラウン氏は、310億ポンド(約5.7兆円)もかけてアップグレードした兵器も、サイバー攻撃で無力化されたら意味がないと主張。

「トライデント」システムがサイバー攻撃に無力化されないことを示すべきだとし、「それができなければ、首相が抑止力を必要としているときに、このシステムが使用できる保障はない」とした。

日本にも必要な抑止力

「核兵器を持たない日本にとっては関係がない話」と思うかもしれないが、ここから学ぶべきは、サイバー攻撃が戦争の抑止にも使える可能性があるということだ。

日本周辺には、核兵器で周辺国を威嚇する北朝鮮や、軍事拡張を進める中国などがある。日本を核兵器や弾道ミサイルから守るためにミサイル防衛システムなどが配備されているが、これらも完璧ではない。

そのため、相手がミサイルを打てなくなるような「防衛兵器」を造ることができれば、国の防衛に大いに役立つ。ハッキングでミサイルの機能を停止させたり、照準をずらして海に落とせば、被害を限りなくゼロに近づけることができる。

「サイバー攻撃」や「ハッキング」というと、「企業秘密や個人情報の漏洩」「インフラの破壊」「犯罪行為」など、マイナスの印象が強い。しかし、もし周辺国に脅威を与えている国に対して抑止力となるのであれば、「サイバー攻撃」も地域の平和や安定に貢献するものとなりうる。

サイバー攻撃がイギリスの核兵器システムにとって脅威である反面、日本にとっては核防衛のための心強い「防衛兵器」になるかもしれない。(中)

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