国際通貨基金(IMF)が、特別引出権(SDR)に中国の人民元を加えることをこのほど承認した。

IMFの発表によると、現在SDR構成通貨として認められている米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円に続いて、来年10月から人民元が5番目のSDR通貨として付け加えられることとなる。その比率は米ドル41.73%、ユーロ30.93%、人民元10.92%、日本円8.33%、英ポンド8.09%だ。

SDRとは?

SDRとは、IMFが世界の主要通貨を混ぜて作った「通貨」で、「通貨バスケット」と呼ばれる。一般人が洋服や食べ物を買うためのものではなく、IMF加盟国の政府が使用するためのものだ。

たとえば、何らかの危機が起き、国の通貨が暴落しそうになった場合、自国に割り当てられたSDRを売って自国通貨を買い支えることができる。そのため、SDRには、国際的に信用があり、安定した通貨が採用されている。

IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事は、人民元の加入について次のように説明している。

「人民元を SDR 構成通貨に含むとする理事会の決定は、中国経済を世界の金融システムに統合していく上での重要な一里塚である。同時にこの決定は中国当局が同国の通貨金融システム改革で過去数年にわたり成し遂げた前進の承認でもある。こうした努力の継続と深化は、より堅固な国際通貨金融システムを作り、それは転じて中国と世界の経済の成長と安定を支えることになろう」

人民元の「国際化」を目指す中国

人民元をSDR構成通貨として認めさせたことは、中国にとって快挙といえる。しかし、果たしてラガルド氏が言うように、中国は通貨金融システムの改革で前進を成し遂げたのだろうか。

人民元は2005年まで「固定相場制」を使っており、1ドル8.27元と決められていた。人民元の価値を市場に決めさせるのではなく、中国中央銀行が為替レートを決めていたのだ。

その後、中国政府は為替レートの変動を許容し始めたが、2008年に金融危機が起きた際、人民元を守るために「固定相場制」を再導入した。人民元が金融市場の荒波に耐えうる通貨ではないことを露呈したのだ。

人民元にはまだ改革が必要

SDR構成通貨と認められるには、「自由に使用できる通貨」であるべきとの条件がある。

現在、人民元は通貨バスケットを参考に為替レートを調整する「管理変動相場制」を用いている。しかし、この通貨バスケットでもっとも大きな比重を占めているのは、米ドル、ユーロ、そして日本円だ。結局、人民元は独り立ちできていない通貨なのだ。

欧米の識者の中には、今回の決定が人民元の「変動相場制への移行を促すかもしれない」という考えもある。

しかし、これは本末転倒ではないだろうか。本来、「改革を行った後」に加入を認めるべきであり、「改革を期待して」加入させるべきものではない。IMFは中国に対して「甘い」対応をするのではなく、元が信用に足る通貨であるか、厳密に審査すべきだ。(中)

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