大阪府知事、大阪市長のダブル選挙は、11月22日に投開票が行われ、いずれも橋下徹前大阪市長が率いる地域政党「大阪維新の会」の候補が当選を決めた。知事選ではダブルスコアの圧勝だった。

この背景には、メディアが作り上げた「空気」がある。

例えば、知事選の告示日に当たる5日付の朝日新聞は『橋下維新vs.自民「最後の戦い」大阪ダブル選、号砲』との見出しを掲げ、「橋下・大阪維新」と自民党を中心とする「反大阪維新」の戦いという対立構造を煽って盛り上げた。橋下氏の人気を"利用"して演出した、典型的な「劇場型選挙」であったと言える。

一方、安倍晋三首相も橋下人気にあやかりたいようだ。今回、大阪の自民党は「反維新」に回ったが、国政では橋下氏との連携を望んでいる。松井一郎大阪府知事は菅官房長官との関係も深く、両者は憲法改正や安全保障などの面では意見が近いからだ。

実際、橋下氏が旗揚げした国政政党「おおさか維新の会」は、来年の参院選で候補者を擁立する方針だというが、今回のダブル選挙の勝利は追い風になるだろう。大阪都構想の是非を問う国民投票に敗れ、一度は政界引退を口にした橋下氏本人も、来年の参院選で国政に進出するのではないかという噂も絶えない。

橋下氏の動向を書くと売れるメディアと味方を増やしたい安倍首相、双方の利害が一致する「橋下氏"復活"」の可能性は非常に高いだろう。

では、もし橋下氏が国政に出たらどんな仕事をするだろうか。

橋下氏の大阪府知事時代には、府の借金が増加を続け、過去最高の6兆円に膨らんだ。また、大阪市の生活保護受給率「約18人に1人」は、全国平均の「約59人に1人」と比べて際立っているが、改善は見られず、生活保護費などが増大して、在任期間中の約4年間に258億円増の5314億円となり過去最大となった。このように、橋下氏は府政、市政ともに後退させている。

さらに言えば、橋下氏は原発再稼動に断固反対の立場を取り、「電力は余っている」「電力が足りないから原発が必要なのではない」とまで述べていた。それが一転して「停電のリスクも考慮に入れなくてはいけない」など再稼動容認に転じた。主張に一貫性がないばかりか、電力需要に関する見識も不足している。

橋下氏の言動には話題性はあるかもしれないが、いつ何時、自己の主張を変えるかもしれず、国政に出ても十分な仕事ができるとは思えない。

今回のダブル選は、政治家とマスコミが結託し、有権者を誘導している状況が露呈したといえる。マスコミは有権者が正しい選択ができるような報道をすべきだが、国民の側もマスコミの煽動や党利党略に踊らされずに政治家を選ぶ目を持ちたいものだ。(油/佳)

【関連書籍】

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