2016年1月号記事
第40回
釈量子の志士奮迅
幸福実現党党首
釈量子
(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
大学生の涙が教えるー
政治参加は「要求」よりも「恩返し」
来年の参院選から「18歳選挙権」が適用されます。若者の投票率を上げるため、教育関係者や各政党が、様々な授業やキャンペーンを模索しています。
「なぜ選挙に行かなければいけないの?」
そんな若者たちの問いに、私たち大人は、どう答えるべきなのでしょうか。
「社会保障で高齢者が得をして、若者が損をする」「景気が悪いと、就職できない」といった損得の話も、もちろん大事な視点です。
しかし、それではどうも若者の胸に響いていない印象です。
若者は「感謝」で人が変わる
「政治参加する動機」ということに関して、非常に印象深い経験があります。
私は政治家を目指す前、宗教法人・幸福の科学で、多くの大学生と接してきました。彼らの悩みを聞き、彼らが成長する姿を見てきました。
自信が持てず、無気力で、将来やりたい事も見つからない。そんな若者たちが、生まれ変わる瞬間があります。
それは「感謝」ができた瞬間です。一人暮らしの学生が、受験勉強を支えてくれた母親の愛情を思い出す。あまり家にいない父親が、20年間、自分を経済的に支え続けてくれたことに思いを馳せて、涙を流す。
それから、彼らの目は急に「大人の目」になり、人格にも重石が乗ったような安定感が出るようになるのです。
こうした経験をした若者が、共通して口にする言葉があります。それは、「世の中の役に立ちたい」という言葉です。感謝が湧いてくると、社会全体への関心や責任感が、誰に言われるでもなく生まれるのです。
こうした体験をきっかけに、今まで「他人事だ」と思っていた政治に、とたんに関心が湧いてくる―。そんな若者を、私は何人も見てきました。
「歴史観で人生観が変わった」
「愛国心」も、政治に関心を持つきっかけになります。
私は各地の講演で、先の大戦における軍人のエピソードを紹介することがあります。
パラオのペリリュー島で戦った中川州男大佐、沖縄戦で戦った牛島満中将、特攻隊として散って行った若者―。
命を懸けて戦った英霊たちの、家族や後世への愛を思わせる逸話や言葉です。
それを聞いた、ある若い女性が、こんなことを言ってくれました。
「この歴史観で、人生観も変わりました」
政治観なら分かりますが、人生観というのは少し意外でした。
小さい頃から、教科書で「悪い人たち」と教わってきた軍人たちの愛に衝撃を受け、「自分も国や後世のために何かしたい」と感じるようになったと言うのです。
「愛」が民主主義の担保
本当の政治参加は、周囲や国への「恩返し」「愛」から始まる―。若者たちの姿に、改めて教えられた気がします。
私たちはともすれば「民主主義は権利の要求だ」と捉えてしまいがちです。
しかし、それだけでは、ポピュリズムや、不満をぶつけるだけの政治参加になりかねません。
自分の損得を超えて、「社会全体が幸福になるには何が必要か」を考える視点が、健全な民主主義を担保するのです。
民主主義の起源は愛国心
理想の国をつくりたいという「愛国心」が健全な民主主義を担保する。
愛国心は、歴史的に「民主主義」と密接な関係があります。
世界史の中で、初めて愛国心が生まれたのは、古代ギリシャで民主主義が栄えた時だと言われています。
ペルシャ帝国の侵略から国を守るため、一般市民が立ち上がって戦いに参加した史実があるからです。
政治思想家で、民主主義研究の大家であるトクヴィルも、民主主義のことを「万人の愛国心」と言い換えています。
民主主義は、「個人や組織が利益を主張し合い、多数決で勝敗が決まる」ものではなく、「理想の国を目指して、意見を交わす」ものなのです。
大川隆法・幸福実現党総裁は1991年、東京大学の五月祭で講演した時、東大生たちをこう激励しました。
「 理想を失って、個人が自分の欲得や利益のために奔走しはじめるときに、それは衆愚政という最も醜いものへと転化するのです(中略)民主主義体制をつくっている一人ひとりは、目覚め、理想に燃えた人たちでなくてはならないのです 」
幸福実現党は、若者に「感謝からの政治参加」の大切さを伝えていくと同時に、私たち自身、同じ国に住む方々への感謝を忘れずに努力してまいります。