新聞各紙に掲載されたヤマト運輸の意見広告。

「いい競争で、いいサービスを。」

「クロネコヤマト」でおなじみのヤマト運輸はこう題し、12日付全国54紙に意見広告を掲載した。

要点を3点にまとめると以下の通り。

  • 日本郵便が行う「郵便業務」は、地域の分け隔てなく、誰もが利用しやすいように維持されるべき「ユニバーサルサービス」の一つで、税制などで優遇措置がとられている。しかし、日本郵便は、ユニバーサルサービスではない宅配便などの「荷物を運ぶ仕事」でも優遇されており、現行の郵便法は、公平・公正な競争を阻害し、規制緩和の流れに逆行している。

  • 現行の郵便法では、わずかな「文面の違い」によって、信書を荷物として運べたり、運べなかったりする。クロネコヤマトは、文面ではなく、文書を入れる「封筒の大きさ」で規制範囲を決めたほうがいいと提案してきた。こちらの方が、荷物を運ぶ事業者、受け取るお客様双方が迷うことなく、利便性が高まる。

  • 荷物の運搬に関係するすべての企業が対等な条件で競い合い、高め合うことで、宅配便業界を取り巻く多くの課題の解決につながり、チャンスと希望を現実のものにすることができるはず。

意見広告にあるように、税の優遇が行われる郵便業務の範囲や、送付が規制される信書の範囲がはっきりと分からないなど、現行の郵便法は非常にあいまいなものだ。

ヤマト運輸が今年3月で、「メール便」を廃止したのも、利用者が誤ってメール便で信書を送り、罪に問われることを防ぐためだ。サービス開始から2008年までの間に利用者が摘発された事例が8件であり、お客様の立場に基づいたものだった。

2004年にも旧日本郵政公社を批判

ヤマト運輸が意見広告を掲載し、日本郵便を批判したのは、今回が初めてではない。

2004年、コンビニ大手のローソンが同社との宅急便の取扱店契約を中途解約し、「ゆうパック」を選んだ際にも、意見広告を掲載した。

当時の意見広告でも、手紙やハガキなどの独占事業で上げた利益をもとに、民間企業が企業努力を重ねて切り拓いてきた市場に参入し価格競争をしようとする、旧日本郵政公社を「公正でない」と批判した。

ヤマト運輸側はあくまでも、「同じ土俵」で戦うべきだと主張しているのである。

宅急便も「規制との戦い」から始まった

もっと時をさかのぼれば、宅急便自体も「規制との戦い」から始まった。

ヤマト運輸が宅急便を始めた1976年当時、大口の荷物を一度に運ぶ方が効率的であるというのが業界の常識であり、運輸省は、郵便局があるので宅急便は必要ない、と主張していた。

一方、ヤマト運輸側は、小口で配達できる利便性を主張し、荷物の全国配送に必要な運転免許の取得を運輸省側に求めていた。意見の異なる両者は激しく対立し、運輸大臣が告訴されるまで深刻な事態となった。同社が47都道府県の免許を取得するまでに、15年もの歳月がかかったほどだ。

規制の壁をクリアしたヤマト運輸は、宅急便の翌日配達はもちろん、生鮮食品を新鮮な状態で運ぶ「クール宅急便」など、お客さまに合わせたサービスを展開し、宅配便業界をけん引している。運輸省とヤマト運輸のどちらに「先見の明」があったかは明らかだ。

お客様のためではなく、国に保護された企業や団体を利するためだけの規制であれば廃止すべきだ。過度な規制は民間企業の活力をそぎ、新事業を育てるという資本主義の精神をつぶしてしまう。

経済成長のために今政府がなすべきことは、規制緩和によって、民間企業が自由に経済活動できるようにすることだ。(冨野勝寛)

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