中国が領海だと主張している南シナ海に、米海軍が艦船を送り、「航行の自由の確認行動」に出ることを主要各紙が報じている。
中国は南シナ海で人工島を作り、その周りの海域を「自分たちの領海だ」と主張している。国際法上、島の周り12海里(約22キロ)は、その島を所有する国の海域となる。しかし、同法によると、人工島は「島」として認められていない。
米海軍は、「人工島の周りは公海である」ことを示すために、今回の行動に出る。
シドラ湾を巡るアメリカとリビアの戦い
さて、米国防総省が今年3月に発表した報告書によると、米海軍は2014年度に、世界19カ国による「過度な領海主張」に対抗するために、各地で「航行の自由の確認行動」を行った。この中には、中国やイランだけでなく、アメリカの同盟国である韓国や台湾も含まれている。
しかし、どれも武力衝突には発展していない。
米海軍が行ってきた「航行の自由の確認行動」が武力衝突に発展した例には、1981年に起きたシドラ湾の一件がある。北アフリカに位置するリビアは、地中海に面するシドラ湾沿岸から62海里(約115キロ)もの領海を主張していたが、国際法上これは認められていなかった。米海軍は湾内を通って、「航行の自由の確認行動」を行った。
これに対してリビア軍が戦闘機を送り、戦闘が勃発。リビア空軍の戦闘機2機が撃墜された。その後、86年と89年にも、湾内で戦闘が起き、両軍とも死傷者を出している。
米中衝突を懸念する世界
リビアは比較的小さな国であり、シドラ湾の一件が本格的な戦争に発展することはなかった。しかし、中国軍はここ20年で飛躍的に軍事力を強化させており、その力はリビアとは比べものにならない。識者の中には、今回の米軍の行動で武力衝突が起きることを懸念する声もある。あるいは、中国船が米海軍の船を囲み、「捕獲」する可能性も考えられる。
今、アメリカがこうした行動をとっているが、実際は、南シナ海の航行の自由がなくなったら、一番困るのはアメリカではなく日本だ。この海域のシーレーンは、日本にとって石油などの戦略物資を輸入するための生命線だからだ。
日本は、アメリカはもちろん、オーストラリアやインドなどの友好国とともに、「航行の自由の確認行動」に参加すべき時が来ているのではないか。(中)
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