スウェーデン政府は来年度の予算編成で増税を検討しており、富裕層にかかる最高税率が世界最高水準に達する見通しだ。このほどロイター通信が報じた。

最高限界税率が60%に?

スウェーデンは1970年代から21世紀に入るまで、福祉国家実現のために高い税金を国民に課してきた。その結果経済は低迷し、2006年にアメリカ型の国家運営へと方針を転換。税金と国民への給付金を減らして「小さな政府」を目指す政策を打ち出してきた。

しかし国民は少ない税金よりも社会保障を望み、1年前に成立したローベン政権は、それまでの自由市場改革から一転、税率を世界最高水準にまで引き上げようとしている。ロイター通信によると、富裕層にかかる最高限界税率は現在の57%から60%に引き上げられる。これに対して、企業家や野党側からは「企業の競争力が低下し労働意欲がそがれる」といった批判の声が上がっているという。

行き過ぎた保障は自由の死につながる

社会保障のために税率を引き上げようとするスウェーデンの姿は、同じく社会保障を盛り込む「新3本の矢」を掲げ、消費増税を予定する安倍政権の姿を髣髴とさせる。しかし、増税による福祉国家に経済発展の道はない。

経済学者のハイエクは『隷属への道』の中で、行き過ぎた保障は自由の死につながると警告を発していた。なぜならば、社会保障を充実させるには増税に次ぐ増税で多くの税金を取り、再分配するしかないからだ。その采配をするのは政府であり、国民の選択の自由は減っていくことになる。

事実、スウェーデン在住12年の日本人女性は、本誌2011年1月号のインタビューで「日本のいいところ」について問われ、「今思えば、日本は選択肢が多かった。こちらは、『皆同じに、平等に』ということで、生活の仕方も商品も、あんまり選択の自由がないんです」とコメントしていた。

増税により政府の税収が増え、さまざまな事業を行うことができ、経済発展と福祉国家の実現につながるという考え方は一見魅力的にも見える。しかし実際は、増税によって国民の生活は苦しくなり、「隷属への道」を着々と歩むことになる。

最大の福祉国家、高税率国家スウェーデンを反面教師として、日本は今一度進路を見直すべきだろう。(祐)

【関連書籍】

幸福の科学出版 ハイエク「新・隷属への道」 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1088

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2015年9月27日付本欄 「新3本の矢」は消費増税10%への布石 でも確実に折れる

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2011年1月号記事 菅首相、それでも スウェーデンを目指しますか?

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