ノーベル平和賞の受賞者が9日に発表される。イギリスのブックメーカー(賭け屋)では、フランシスコ・ローマ法王が最有力であるが、ドイツのメルケル首相がその対抗馬として急浮上している。

その要因としては、メルケル首相が中東の難民を多く受け入れているためだ。その姿勢には、難民を極端に受け入れない日本は見習うべきであろう。その他にもドイツは、財政均衡に力を入れたり、ウクライナ問題をめぐってアメリカと対立するロシアの仲裁役を買うなど、リーダーシップを発揮している。だが、ドイツは本当に「模範国家」なのか。

自虐史観で難民を受け入れるドイツ

ドイツが難民を受け入れる理由は、かつてのナチスがユダヤ人を迫害した「過去への清算」という意味をこめているためだ。それは、ドイツの憲法である基本法にも、「政治的に迫害される者は庇護権を享有する」(第16条)と示されている。

もちろん、ユダヤ人への迫害は許されない。しかし、過去の清算に固執すれば、国家を蝕む「自虐史観」となり、ドイツ国民全体を不幸にしてしまう。生きることに罪悪感を覚える国のあり方には問題がある。むしろ、多くの難民をつくり出した他の欧米諸国も、難民への対応姿勢を問われるべきではないか。

自虐史観から打ち出されるドイツの難民受け入れは、「日本は先の大戦でアジアを侵略したのだから、難民を受け入れるべき」という間違った論理につながりかねない。ドイツは、そろそろ、行き過ぎた自虐史観を捨て去らないといけない。

緊縮財政を他国に強いるドイツ

さらにドイツが模範的と評されるのは、緊縮財政に熱心である点だ。しかし、緊縮財政は、不景気を誘引し、失業者を増やすリスクがつきまとう。世界経済の悪化に繋がる緊縮財政を、経済力の乏しいギリシャなどに要求するドイツの姿勢は、いかがなものか。

「過去の大戦への反省」「緊縮財政」というメルケル首相のやり方は、民主党の鳩山由紀夫元首相を想起させる。さすがに日本では、経済や日米同盟をめちゃくちゃにした鳩山元首相に、ノーベル平和賞を与えようという声が上がらないだろう。

ノーベル平和賞は左翼のためにある?

そもそも、ノーベル平和賞自体に問題がある。創設者のノーベルは、遺言で「国家間の友愛関係の促進、常備軍の廃止・縮小、平和のための会議・促進に最も貢献した人物に与えられるべき」と残しているが、これに素直に従えば、左翼運動家が授賞してしまう確率が高い。常備軍の廃止・縮小と平和の促進は両立しないことが多い。

それを見れば、メルケル首相がその候補に名前をつらねるのも理解がつく。左翼色が強く、結局平和に結びつかないのであれば、ノーベル平和賞は要らないのではないか。(山本慧)

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