2015年のノーベル医学・生理学賞に、微生物がつくり出す有用な化合物を400種類以上も発見した北里大学特別栄誉教授の大村智氏(80)ら3人が選ばれた。受賞理由は、発見した化合物が風土病などの治療薬として実用化され、医療や科学の進歩に貢献したためだ。

大村氏は1975年、静岡県伊東市のゴルフ場の土の中から発見した新種の放線菌から、寄生虫などを麻痺させる抗生物質エバーメクチンを発見した。その後、この抗生物質がアフリカの風土病「オンコセルカ症」にも有効であることが分かり、米製薬会社メルクが治療薬として製品化した。

オンコセルカ症は、線虫の幼虫が目に入ることで発症し、失明の恐れもある。この治療薬は世界保健機関(WHO)を通じてアフリカなどの10億人以上に無償供与されてきた。

大村氏は5日の夜、記者会見の場で「人のために仕事をしなければならない」という精神で研究に励んできたと述べた。この精神は祖母から教わり、分かれ道に立った時はこの考えを基準にして考えたという。また、「人のまねをやっていては人を超えられない」とも述べ、自分の進む道を信じることの大切さも示した。

昨年に続いて、日本人が医学・生理学賞を受賞したことは大変うれしいニュースだ。大村氏の行ってきた研究は、土壌から採取した細菌を年間2000~4000株培養するという、大変地道な作業を伴うものだ。コツコツと研究を行っている他の多数の研究者にも、勇気を与えることだろう。

興味深いのは、大村氏が決して環境に恵まれていたわけではない、という点だ。大村氏は山梨大学芸学部卒業後、東京都立墨田工業高校の夜間部で教えた。その後、昼は東京理科大の大学院にも進学し、昼は実験しつつ、夜は教鞭を取るという生活を送ったという。

大村氏の人生は、「諦めずに努力し続けることの大切さ」を教えてくれている。大川隆法・幸福の科学総裁は2009年4月、「未来開拓法」という法話の中で、次のように述べている。

「世の中で成功している人を見ると、共通していることは、ほとんど一点です。それは、『努力に努力を重ね、精進に精進を重ねている』ということです。単純ですが、成功している人たちを見ると、そのとおりなのです。単に努力しているだけではなく、努力に努力を重ね、精進に精進を重ねています」

また、大村氏が努力を続けられたのは記者会見での発言からもわかるように、「利他の思い」で研究を行っていたからだろう。ノーベル賞受賞は、「人のため」に研究を続けてきた大村氏へのご褒美なのかもしれない。私たちも大村氏を見習い、「利他の思い」と「粘り強い努力」によって、新たな付加価値を生み出していきたい、そう心から思う。(泉)

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幸福の科学出版 『ロケット博士・糸川英夫の独創的「未来科学発想法」』 大川隆法著

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幸福の科学出版 『もし湯川秀樹博士が幸福の科学大学「未来産業学部長」だったら何と答えるか』 大川隆法著

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